KANTAN!(カンタン)

中河内医療圏の看護師不足は「不足」なのか

~二次医療圏データから考える都市近接型医療圏の人材課題~

 

■はじめに

看護師不足。

医療・介護業界では長年語られているテーマです。

しかし、その背景は地域によって異なります。

大阪市医療圏では「需要集中」。

豊能医療圏では「高度医療集積」。

三島医療圏では「地域完結型医療への移行」。

北河内医療圏では「需要総量の大きさ」という構造が見えてきました。

今回取り上げるのは中河内医療圏です。

東大阪市、八尾市、柏原市で構成される中河内医療圏は、大阪府内でも人口密度の高い医療圏です。

製造業の集積地として知られる一方、多くの住宅地も抱える生活圏でもあります。

人口は多い。

医療需要も大きい。

それでも看護師不足は語られ続けています。

今回は中河内医療圏のデータをもとに、その背景を整理してみます。

 

■中河内医療圏とはどのような地域か

中河内医療圏は、

  • 東大阪市
  • 八尾市
  • 柏原市

で構成される二次医療圏です。

人口は約83万人。

人口密度は約6,400人/㎢。

大阪府内でも人口密度の高い地域の一つです。

大阪市に隣接しているため都市型の特徴を持ちながらも、独立した生活圏として機能しています。

また、

  • 市立東大阪医療センター
  • 八尾市立病院
  • 八尾徳洲会総合病院
  • 河内総合病院

などの中核病院を有し、地域医療を支えています。

 

■医療資源は本当に豊富である

一般的に、「大阪府内だから医療資源は豊富」

という印象を持たれるかもしれません。

実際、中河内医療圏には急性期病院や救急医療機関が存在し、一定の医療提供体制が整っています。

しかし、大阪市医療圏や豊能医療圏と比較すると、医療資源は決して潤沢とは言えません。

人口約83万人に対し、

医師数は人口10万人あたり約255人。

看護師数は人口10万人あたり約646人。

大阪府内では比較的低い水準に位置します。

つまり、医療需要に対して供給余力が大きい地域ではないという特徴があります。

 

■「看護師不足」ではなく「供給余力の少なさ」という見方

中河内医療圏を考えるうえで重要なのは、人口規模と医療資源のバランスです。

人口は多い。高齢者も増えている。

しかし、医療従事者数には限りがある。

その結果、看護師不足というよりも、

「供給余力の少なさ」

という見方ができるかもしれません。

平常時は成立していても、

退職。

休職。

産休。

育休。

感染症流行。

こうした変化が起きた際に、現場負荷が高まりやすい構造です。

 

■中河内医療圏で起きている課題

中河内医療圏では、

急性期医療。

救急医療。

慢性期医療。

在宅医療。

これらすべてが必要とされています。

しかし、医療資源に大きな余裕があるわけではありません。

そのため、一人ひとりの看護師にかかる負担が大きくなりやすい。

また、大阪市への通勤圏でもあるため、人材流出の影響も受けやすい地域です。

つまり、採用だけでなく、定着も重要なテーマになります。

 

■今後さらに需要は増える

中河内医療圏でも高齢化は進んでいます。

高齢化が進むということは、

病院需要。

介護需要。

訪問看護需要。

在宅医療需要。

これらすべてが増加することを意味します。

一方で、生産年齢人口は減少していきます。

つまり、医療を必要とする人は増える。

働き手は減る。

この構造は今後さらに強まる可能性があります。

 

■本当に不足しているのは「人数」なのか

ここで改めて問いを立てます。

中河内医療圏で不足しているのは、本当に看護師の人数なのでしょうか。

現場には、

  • 子育て中の看護師
  • ブランクのある看護師
  • 副業を希望する看護師
  • 短時間勤務を希望する看護師

など、多様な人材が存在しています。

資格も経験もある。

しかし、フルタイム勤務への不安。

復職への不安。

現場への心理的ハードル。

こうした理由で医療現場から距離を置いているケースもあります。

 

■「接続不足」という仮説

私たちは、中河内医療圏の課題も、

単純な人数不足だけでは説明できないと考えています。

それが、

「接続不足」

です。

働ける可能性のある人はいる。

人材を必要とする現場もある。

しかし、両者が十分につながっていない。

この状態です。

供給余力の少ない地域ほど、

新たな採用だけでなく、今いる人材との接点を増やすことが重要になります。

だからこそ、現場との接続をどう設計するかという視点が必要になるのではないでしょうか。

 

■考察

中河内医療圏は、人口密度が高く、日常的な医療需要の大きい地域です。

一方で、医療従事者数には大きな余裕があるわけではありません。

そのため、現場は常に一定の負荷を抱えながら運営されている可能性があります。

看護師不足という言葉の裏には、

単純な人数不足ではなく、

「供給余力の少なさ」

という構造課題が存在しているように見えます。

今後高齢化が進む中で、この課題はさらに大きくなるかもしれません。

 

■地域完結型医療に必要なもの

現在、国は地域完結型医療を推進しています。

病院。

在宅。

介護。

地域で支える医療体制です。

しかし、

地域完結型医療は施設だけでは成立しません。

必要なのは人です。

医師。

看護師。

介護職。

リハビリ職。

薬剤師。

医療事務。

地域完結型医療を支えるためには、地域完結型の人材接続も必要になります。

 

■KANTANが考えること

中河内医療圏の課題は、単純な看護師不足だけでは説明できません。

そこには、

供給余力の少なさ。

高齢化。

働き方の多様化。

復職不安。

接続不足。

といった複数の要素が存在しています。

私たちは、人材を増やすことだけでなく、

働ける可能性のある人と現場をどう接続するかも重要だと考えています。

看護師不足を「人数不足」だけで捉えるのではなく、「接続不足」という視点から見直してみる。

その先に、地域医療を支える新しい選択肢があるのかもしれません。

 

【出典】

本記事は株式会社日本経営「医療需給総覧(中河内医療圏)」を参考に作成しています。

出典:医療需給総覧(株式会社日本経営)

 

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