KANTAN!(カンタン)

豊能医療圏の看護師不足は「不足」なのか

~二次医療圏データから考える北摂エリアの人材課題~

 

■はじめに

看護師不足。

医療・介護業界では長年語られているテーマです。

しかし、「看護師不足」と一言で言っても、その背景は地域によって大きく異なります。

前回の大阪市医療圏では、医療資源が集積する都市部ならではの「需要集中」という視点から考察しました。

今回取り上げるのは、豊能医療圏です。

豊中市、池田市、吹田市、箕面市、豊能町、能勢町で構成される豊能医療圏は、大阪府内でも医療資源が充実した地域として知られています。

大阪大学医学部附属病院や国立循環器病研究センターなど、高度医療を担う医療機関も集積しています。

一見すると、人材確保に困る地域には見えません。

しかしデータを見ていくと、別の課題が見えてきます。

それは、

「人が減るのに患者は増える」

という構造です。

今回は豊能医療圏のデータをもとに、その背景を整理してみます。

 

■豊能医療圏とはどのような地域か

豊能医療圏は、

  • 豊中市
  • 池田市
  • 吹田市
  • 箕面市
  • 豊能町
  • 能勢町

で構成される二次医療圏です。

人口は約105万人。

人口密度は約3,833人/㎢です。

また、

  • 大阪大学医学部附属病院
  • 国立循環器病研究センター

をはじめとする高度医療機関を抱え、大阪府内でも医療提供体制が充実している地域として位置付けられています。

人口10万人あたりの医師数は405.2人。

人口10万人あたりの看護師数は892.6人です。

医療人材の集積という観点では、決して恵まれていない地域とは言えません。

 

■医療資源は本当に豊富である

一般的に北摂エリアは、

「住みやすい地域」

「教育環境が整った地域」

というイメージを持たれることが多くあります。

医療についても同様です。

実際に豊能医療圏は、大阪府内でも高度医療機関が集中している地域の一つです。

高度急性期医療。

循環器医療。

大学病院による専門医療。

こうした医療資源が整備されています。

医療提供体制だけを見ると、人材不足とは無縁に見えるかもしれません。

しかし、将来推計を見ていくと別の課題が見えてきます。

 

■「看護師不足」ではなく「人口減少と需要増加」という見方

豊能医療圏の将来推計を見ると、

総人口は約105万人から約97万人へ減少すると予測されています。

一方で、後期高齢者人口は約14.5万人から約20.5万人へ増加。

高齢化率は26.0%から33.7%へ上昇すると見込まれています。

つまり、地域全体の人口は減る。

しかし医療を必要とする人は増える。

という状況です。

さらに推計では、入院患者数は1日あたり8,921人から10,979人へ増加するとされています。

これは非常に特徴的な数字です。

人口が減少しているにもかかわらず、医療需要そのものは増加しているのです。

 

■豊能医療圏で起きている課題

ここで重要なのは、

人口減少=医療需要減少

ではないということです。

医療や介護の需要は、総人口よりも年齢構成の影響を強く受けます。

特に75歳以上人口の増加は、

入院医療。

外来医療。

訪問看護。

介護サービス。

これらすべての需要増加につながります。

つまり豊能医療圏では、人口減少社会の中で、医療需要だけが増え続ける可能性があります。

これは病院だけの問題ではありません。

地域全体で医療・介護人材をどう確保するかという課題でもあります。

 

■今後さらに需要は増える

今後、病院需要だけでなく、在宅医療や訪問看護の需要も増加すると考えられます。

地域包括ケアシステムの推進により、医療は病院完結型から地域完結型へ移行しています。

そのため、

病院。

訪問看護。

介護施設。

在宅医療。

これらすべての現場で人材需要が高まる可能性があります。

つまり、看護師不足というよりも、看護師需要そのものが増えていく構造にあると言えます。

 

■本当に不足しているのは「人数」なのか

ここで改めて問いを立てます。

豊能医療圏で不足しているのは、本当に看護師の人数なのでしょうか。

現場では、

  • 子育て中の看護師
  • ブランクのある看護師
  • 介護と両立する看護師
  • 短時間勤務を希望する看護師

など、多様な働き方を希望する人が存在しています。

資格も経験もある。

しかし、フルタイム勤務には不安がある。

現場復帰にハードルを感じる。

そうした理由から、医療現場との接点を持てていないケースもあります。

 

■「接続不足」という仮説

私たちは、

豊能医療圏の人材課題を考えるうえで、人数不足だけでは説明できない部分があると考えています。

それが、

「接続不足」

です。

人材は存在する。

現場も存在する。

しかし、両者が十分につながっていない。

この状態です。

人口減少社会において、単純に人材を増やすことは簡単ではありません。

だからこそ、今いる人材と現場をどうつなぐか。

その視点が重要になるのではないでしょうか。

 

■考察

豊能医療圏は、

大阪府内でも医療資源が充実した地域です。

しかし将来推計を見ると、人口は減少しながら、医療需要は増加するという構造が見えてきます。

これは、単純な看護師不足という言葉だけでは説明できません。

むしろ、

「支える人が減るのに、支えるべき患者は増える」

という構造的課題が存在しています。

今後の豊能医療圏では、人材確保だけでなく、

既存の医療人材が地域の中で活躍し続けられる環境づくりも重要になると考えられます。

 

■地域完結型医療に必要なもの

現在、国は地域完結型医療を推進しています。

病院。

在宅。

介護。

地域で支える医療体制です。

しかし、

地域完結型医療は施設だけでは成立しません。

必要なのは人です。

医師。

看護師。

介護職。

リハビリ職。

薬剤師。

医療事務。

地域完結型医療を支えるためには、

地域完結型の人材接続も必要になります。

 

■KANTANが考えること

豊能医療圏の課題は、

単純な看護師不足だけでは説明できません。

そこには、

人口減少。

高齢化。

医療需要増加。

働き方の多様化。

接続不足。

といった複数の要素が存在しています。

私たちは、

人材を増やすことだけでなく、

働ける可能性のある人と現場をどう接続するかも重要だと考えています。

看護師不足を「人数不足」だけで捉えるのではなく、

「接続不足」という視点から見直してみる。

その先に、地域医療を支える新しい選択肢があるのかもしれません。

 

【出典】

本記事は株式会社日本経営「医療需給総覧(豊能医療圏)」を参考に作成しています。

出典:医療需給総覧(株式会社日本経営)

 

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