KANTAN!(カンタン)

大阪市医療圏は本当に看護師不足なのか

~二次医療圏データから考える都市型医療圏の人材課題~

 

■はじめに

看護師不足。

医療・介護業界では長年語られているテーマです。

大阪市内でも、多くの病院や介護施設、訪問看護事業所が人材確保に苦労しています。

一方で、大阪市医療圏は大阪府内でもっとも医療資源が集積する地域です。

病院が多い。

医師も多い。

看護師も多い。

それでもなお、人材不足が語られるのはなぜでしょうか。

今回は、大阪市医療圏のデータをもとに、その構造を整理してみます。

 

■大阪市医療圏とはどのような地域か

大阪市医療圏は大阪市24区で構成される二次医療圏です。

人口は約275万人。

人口密度は約12,200人/㎢。

大阪府内最大の人口規模を持つ医療圏であり、全国的に見ても有数の都市型医療圏です。

また、

  • 大学病院
  • 高度急性期病院
  • 専門医療機関
  • 救命救急センター

などが集中しており、大阪府全体の高度医療を支える役割を担っています。

つまり大阪市医療圏は、単に「大阪市民の医療」を支えているだけではありません。

周辺医療圏や府外からも患者が流入する広域医療拠点として機能しています。

 

■医療資源は本当に豊富である

一般的に、「大阪市は医療資源が豊富」と言われます。

これは事実です。

病院数。

病床数。

専門医療機関。

いずれも府内で最大規模です。

大阪府内には8つの二次医療圏がありますが、大阪市医療圏はその中心に位置しています。

医療提供体制だけを見れば、人材不足とは無縁に見えるかもしれません。

しかし実際には、多くの医療機関が採用に苦戦しています。

ここに今回の分析の出発点があります。

 

■「看護師不足」ではなく「需要集中」という見方

大阪市医療圏で起きている現象を考える上で、一つの仮説があります。

それは、

「看護師不足」ではなく、

「看護師需要の集中」

ではないかということです。

例えば看護師資格を持つ人は、

  • 大学病院
  • 急性期病院
  • 回復期病院
  • クリニック
  • 訪問看護
  • 介護施設
  • 健診センター
  • 一般企業

など、多様な選択肢を持っています。

つまり、看護師が存在しないわけではありません。一方で、

看護師を必要とする事業所も非常に多い。

結果として、人材供給が多い地域であると同時に、

人材需要も極めて大きい地域になっています。

 

■都市部で起きる「採用競争」

地方医療圏では、「働き手そのものが少ない」という課題が前面に出ます。

しかし大阪市医療圏では少し様子が異なります。

ここで起きているのは、採用競争です。

病院同士。

病院と訪問看護。

病院と介護施設。

医療機関と企業。

同じ看護師資格者を巡って、多くの事業者が競争しています。

つまり、「人がいない」というより、「選ばれない」

という課題です。

これは都市型医療圏特有の課題と言えるかもしれません。

 

■今後さらに需要は増える

ここで将来を考えてみます。

大阪市医療圏も高齢化とは無縁ではありません。

今後も高齢者人口の増加が見込まれています。

重要なのは、高齢者人口の増加は、病院需要だけでなく、

訪問看護や介護需要の増加も意味することです。

つまり、看護師需要は今後も増える可能性が高い。

一方で、生産年齢人口は減少していく。

この構造は、医療機関の採用競争をさらに激しくする可能性があります。

 

■本当に不足しているのは「人数」なのか

ここで改めて問いを立てます。

大阪市医療圏で不足しているのは、本当に看護師の人数なのでしょうか。

現場で話を聞くと、別の景色も見えてきます。

例えば、

  • 子育て中の看護師
  • 介護離職した看護師
  • ブランクのある看護師
  • 副業を希望する看護師
  • 短時間勤務を希望する看護師

こうした人たちは、資格も経験も持っています。

しかし、いきなり常勤勤務には不安がある。

現場復帰のハードルが高い。

その結果、働ける可能性があるにもかかわらず、

現場との接点を持てていないケースがあります。

 

■「接続不足」という仮説

私たちは、都市部の看護師不足を考えるうえで、

もう一つの視点が必要ではないかと考えています。

それが、「接続不足」です。

人材は存在する。

現場も存在する。

しかし、両者がうまくつながっていない。

この状態です。

もちろん、人数不足が存在しないわけではありません。

しかし大阪市医療圏では、人数不足だけでは説明できない現象が起きています。

だからこそ、採用だけでなく、現場との接続をどう増やすか。

その視点も重要になるのではないでしょうか。

 

■考察

大阪市医療圏は、大阪府内で最も医療資源が集積する地域です。

しかし、医療資源の豊富さと人材課題の少なさは一致しません。

むしろ、

医療需要の集中。

採用競争。

働き方の多様化。

高齢化による需要増加。

こうした要素が重なることで、都市部特有の人材課題が生まれているように見えます。

看護師不足を単なる人数不足として捉えるだけでは、この構造は見えてきません。

大阪市医療圏では、「人材不足」と同時に、「人材接続」

という視点も必要なのかもしれません。

 

■地域完結型医療に必要なもの

現在、国は地域完結型医療を推進しています。

病院。

在宅。

介護。

地域で支える医療体制です。

しかし、地域完結型医療は施設だけでは成立しません。

必要なのは人です。

医師。

看護師。

介護職。

リハビリ職。

薬剤師。

医療事務。

地域完結型医療を支えるためには、地域完結型の人材接続も必要になります。

 

■KANTANが考えること

大阪市医療圏の看護師不足は、単純な人数不足だけでは説明できません。

そこには、

需要集中。

採用競争。

働き方の多様化。

復職不安。

接続不足。

といった複数の要素が存在しています。

私たちは、人材を増やすことだけでなく、

働ける可能性のある人と現場をどう接続するかも重要だと考えています。

それは都市部だからこそ必要になる視点なのかもしれません。

看護師不足を「人数不足」だけで捉えるのではなく、「接続不足」という視点から見直してみる。

その先に、地域医療を支える新しい選択肢があるのかもしれません。

 

【出典】

本記事は株式会社日本経営「医療需給総覧(大阪市医療圏)」を参考に作成しています。

出典:医療需給総覧(株式会社日本経営)

 

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