看護師の取り返しのつかないミスとは?対応方法や事例も紹介
看護師として働くなかで、「取り返しのつかないミスをしてしまったらどうしよう」と不安を感じた経験はありませんか。
自分自身がミスをしてしまった場合や、同僚のインシデントを目の当たりにして落ち込んでいる方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、看護師が起こしやすい重大なミスの種類や具体的な事例、ミスをしてしまった際の対応方法、再発防止策、落ち込んだときの気持ちの切り替え方まで、現場で役立つ情報をわかりやすくお伝えします。
看護師の取り返しのつかないミス
看護師の仕事は患者さんの命を預かる責任の重い業務であり、日々さまざまな場面で正確な判断と行動が求められます。
どれだけ経験を積んでいても、人間である以上ミスの可能性はゼロにはなりません。
なかでも患者さんの命や健康に重大な影響を及ぼすような取り返しのつかないミスは、看護師にとって他人事ではないものです。
ここでは、看護師が現場で特に注意すべき代表的な3つのミスについて、それぞれの特徴や起こりやすい背景を詳しく解説していきます。
投薬ミス
投薬ミスは、看護師が起こすミスのなかでも代表的なものです。
誤った薬剤や用量を投与したり、投与時間や経路を間違えたりすると、患者さんの命に関わる重大な事故につながります。
特に似た名前の薬剤や、投与量の変更があった場合には注意が必要です。
薬物アレルギーのある患者さんに禁忌薬を投与してしまうと、アナフィラキシーショックを起こすリスクもあります。
多忙な業務のなかでは確認不足によるミスが生じやすいため、ダブルチェックや6Rの徹底が重要です。
申し送りミス
申し送りミスも、患者さんの安全に直結する重大なインシデントの一つです。
申し送りが正しく行われないと、患者さんの最新の状態や治療方針、投薬内容、アレルギー情報などが次の勤務者へ伝わりません。
この結果、必要な処置が遅れたり誤った対応をしてしまったりする可能性があります。
たとえば、日中のバイタルサインの変化が夜勤者に伝わらなかったことで、患者さんの急変対応が遅れてしまうケースも考えられます。
また、緊急性が低いと自己判断し情報を共有しないことが原因になる場合もあります。
些細なことでも漏れなく共有する姿勢が大切です。
患者の取り違えによるミス
患者さんの取り違えは、与薬や注射、手術、検査、輸血など患者さんに関わるあらゆる場面で発生するリスクがあります。
特に同姓同名の患者さんや、似た名前の患者さんが入院している場合、病棟が多忙な時間帯では取り違えが起こりやすい傾向です。
看護師が「○○さんですね?」と声をかけるだけでは、患者さんが内容を理解しないまま返事をする可能性もあります。
このため、フルネームを患者さん自身に名乗ってもらい、リストバンドや点滴ボトルとの照合を徹底することが求められます。
看護師のミスの具体的な事例
ここでは、厚生労働省が公表している「重要事例集計結果」に記載されているインシデント事例を参考に、実際に医療現場で発生した看護師のミスを具体的にご紹介します。
過去のインシデントを知ることは、自分自身の業務を見直し、再発防止につなげるうえで重要です。
他人事と考えずに、どのような状況でミスが起きているのか、背景にある要因は何かを把握しておきましょう。
以下では、薬剤関連のミスから、点滴の設定、ナースコールの接続に至るまで、5つの代表的な事例を順にご紹介していきます。
薬剤を取り違えた事例
厚生労働省の重要事例集計結果の事例7では、トプシムスプレーを処方すべき患者さんに対して、誤ってトプシンローションが投与されたインシデントが報告されています。
患者さんが使用前に気づいて大事には至りませんでしたが、製品名に類似性がある薬剤を取り扱う際の注意不足が背景にありました。
製品名の記載がローションの場合には、製品名の後にLの記載があるなど類似名の薬剤では識別しづらいケースもあります。
類似薬を取り扱う際は、製品名を正確に読み上げて確認し、紛らわしい薬品を隣接して保管しないといった対策が求められます。
投薬する薬を間違えた事例
厚生労働省の重要事例集計結果の事例37では、他の患者さんの内服薬を急いで投薬カートから持ってきてしまい、誤った患者さんに点滴を接続してしまったインシデントが報告されています。
この背景には、確認方法の不備と、似た疾患・年齢の患者さんが同室にいたことによる思い込みがありました。
このようなミスを防ぐためには、投薬ボトルのフルネームとベッドネームの照合・確認を確実に行い、指差し呼称を徹底することが重要です。
また、症状や年齢、名前などが似ている患者さんは別室にするなどの対策も有効です。
指示以外の薬剤を混入させた事例
厚生労働省の重要事例集計結果の事例65では、抗生剤点滴指示のない患者さんに対して、抗生剤の点滴を使用しようとしたところで誤りに気づいたインシデントが報告されています。
直前でミスに気づいたため実害はありませんでしたが、指示内容の確認不足という重大な問題を含んでいました。
薬剤を使用する場合は、指示の確認を徹底し、思い込みで作業を進めないことが大切です。
また、カルテや指示書を照合する習慣をつけ、違和感があれば作業を中断し確認する姿勢が求められます。
点滴のスピードを間違えた事例
厚生労働省の重要事例集計結果の事例71では、ある患者さんへの点滴スピードが95ml/時に設定されており、予定でも95ml/時であったものの、確認したところスピードが間違っていたというインシデントが報告されています。
点滴スピードの確認ミスが背景にあり、スピードが変わった理由は不明でした。
これの対策として、点滴開始時だけでなく、交代時や定期的なラウンド時にもスピード・残量・滴下状況を確認することが重要です。
投与ルートに複数の薬剤が接続されている場合には、特に慎重な確認が必要です。
ナースコールの接続がされていなかった事例
厚生労働省の重要事例集計結果の事例97では、ベッドを移動した際にナースコールの接続がされていなかったインシデントが報告されています。
患者さんがナースコールを押しても看護師が気づかず、一人で排尿のためにベッドを離れてしまう結果となりました。
ベッド移動や病室の環境変更を行った際は、ナースコールがしっかりと接続されているか、手元に届く位置にあるかを確認することが基本です。
気配りを徹底し、患者さんが安心して過ごせる環境を整えましょう。
看護師が取り返しのつかないミスをしたときの対応方法
万が一、取り返しのつかないミスをしてしまった場合、どのような対応を取るかによって患者さんへの影響は変わります。
また、ミスが起きたときこそ、冷静かつ誠実に対応することが求められます。
隠したり、一人で判断したりすることは避け、組織として適切な対応を取ることが、被害を最小限に抑え、患者さんと自分自身を守ることにつながります。
ここでは、ミスをしてしまったときに取るべき基本的な対応方法を2つのポイントに分けて解説していきます。
患者さんと上司に報告する
ミスに気づいたら、まずは速やかに上司や担当医師に報告しましょう。
自分だけで解決できそうな小さなミスに見えても、勝手な判断で対処しようとせず、正確に状況を伝えましょう。
また、患者さんに対しても誠実に説明し、誤魔化したり隠したりすることはしてはいけません。
ミスの報告は、組織全体で再発防止に取り組むための第一歩であり、患者さんの安全を守るために大切な行動です。
報告をためらわない職場環境をつくることも、医療安全の観点から重要です。
迅速に対応する
ミスが発覚した際は、患者さんへの被害を最小限にとどめるため、迅速に対応する必要があります。
まずはバイタルサインの確認や救急対応の要請、必要な検査や処置の準備を並行して行い、同時にリーダーや上司へ報告しましょう。
感情的になってしまう場面ですが、定められた手順に沿って動くことが現場と患者さんを守ります。
その後は記録と関係部署への連絡、ご家族への説明、原因分析へと段階的に進めていきましょう。
時系列で事実を整理し、正確な記録を残すことも重要です。
看護師が取り返しのつかないミスを防ぐ方法
ミスを完全にゼロにすることは難しいですが、日々の業務のなかで意識的に取り組むことで発生リスクを減らすことは可能です。
看護師が取り返しのつかないミスを防ぐためには、確認作業の徹底、チームでの連携、業務の見直し、情報共有の4つの視点から総合的にアプローチしていく必要があります。
ここでは、現場ですぐに実践できる具体的な防止策を4つに分けて、それぞれ詳しく解説していきます。
「慣れているから問題ない」という思い込みを捨て、慎重な姿勢を持ち続けることが重要です。
6Rを確認する
投薬時のエラーを防ぐための基本として、6Rの確認があります。
6Rとは「6つのright(正しい)」の略で、投薬における基本的な確認項目です。
以下の表に6Rの各項目をまとめました。
確認項目
| 内容
|
Right Patient
| 正しい患者
|
Right Drug
| 正しい薬剤
|
Right Purpose
| 正しい目的
|
Right Dose
| 正しい用量
|
Right Route
| 正しい用法(経路)
|
Right Time
| 正しい時間
|
この6Rを指差し呼称しながら声に出して確認することで、確認漏れや思い込みによるミスを防ぐことができます。
指差し呼称は、対象をしっかり見て指で指し、声に出して確認する動作で、注意力を高める実践的な方法として広く推奨されています。
ダブルチェックを依頼する
ダブルチェックは、看護師一人の確認では見落としがちなミスを防ぐための有効な手段です。
特に投薬や点滴の準備、患者さんを確認する場面では、他の看護師や医師に協力を依頼して2名以上で確認することが望ましいでしょう。
薬剤、検査、手術など重要な場面で声出し、指差し確認を併用することで、ミスのリスクを低減することができます。
また、医師の指示が変更された際には、他の看護師2名以上で改めてチェックすることも効果的です。
さらに、ダブルチェックの際に業務上の不明点や不安を相談することで、解決につながる場合もあります。
業務量や業務手順を見直す
業務量が過多である状態や人手不足の状況は、ミスを誘発する大きな要因です。
これは、看護師1人あたりの受け持ち患者数が増えると、確認作業が不十分になったり、焦りから見落としが発生したりしやすくなるためです。
業務量が慢性的に多い場合は、上司や管理者に相談し、勤務体制や業務分担の見直しを検討してもらうことが必要です。
また、業務手順についても定期的に見直しを行い、より安全で効率的なフローに改善していくことが大切です。
この他にも標準作業やチェックポイントを可視化することで、ミスを防ぐことにつながります。
インシデントを共有する
ヒヤリ・ハット事例やインシデントを個人のなかで抱え込まず、チーム全体で共有することはミスの再発防止に大きな効果があります。
具体的には、申し送りやカンファレンスの場で具体的な事例を共有することで、他の看護師も同じようなミスを起こさないよう注意を払うことができます。
また、インシデントの報告は個人を責めるためのものではなく、組織として学び、改善していくための大切な仕組みです。
過去のインシデントを教訓として活かし、現場全体で医療安全の意識を高めていきましょう。
なお、共有された情報は、新人教育や研修でも有効に活用できます。
看護師がミスをして落ち込んだときに取るべき行動
看護師は命を預かる責任の重い仕事であるため、ミスをしてしまったときの精神的な負担は大きなものです。
「自分は看護師に向いていないのかもしれない」「もう立ち直れない」と落ち込み、自信を失ってしまう方も多いでしょう。
しかし、いつまでもネガティブな気持ちのままでいると、他の業務にも支障が出てしまう可能性があります。
ここでは、ミスをして落ち込んだときに取るべき建設的な行動を3つに分けて紹介します。
一人で抱え込まず、前向きに対処していくためのヒントにしてみてください。
気持ちを切り替えること
ミスをして落ち込むのは、問題点と真摯に向き合っている証拠でもあります。
責任感が強い方ほど自分を責めてしまいがちですが、「人は失敗から学ぶもの」と考え、前向きに気持ちを切り替えることも大切です。
落ち込んだときこそ、十分な睡眠や栄養のある食事、朝日を浴びて生活リズムを整えるなど、心身の健康を保つ工夫を意識しましょう。
また、業務中に感じる緊張やストレスは、深呼吸やストレッチ、気持ちを書き出すといった方法でこまめに調整することをおすすめします。
過度な心身の負担を感じる場合は、産業医やカウンセリング窓口に相談することも検討しましょう。
上司や同僚に相談すること
ミスを一人で抱え込んでしまうと、悩みが深くなり、さらに精神的に追い込まれてしまうことがあります。
信頼できる上司や先輩、同僚に気持ちを話すことで、気持ちが軽くなったり、新しい視点を得られたりすることも多いものです。
また、同じような経験をした同僚からのアドバイスは、立ち直るきっかけになる場合もあります。
知り合いに相談しづらいと感じる場合は、職場の相談窓口や外部のカウンセリングサービスを利用するのも有効です。
自分一人で解決しようとせず、周囲のサポートを積極的に活用していきましょう。
再発防止策を考えること
ミスの要点や問題点を冷静に分析した後は、再発防止のための具体的な対策を考えることが重要です。
何が原因でミスが起きたのか、どうすれば防げたのかを振り返り、次に活かすことで、同じ過ちを繰り返さない看護師として成長できます。
具体的には、申し送り時における詳しい情報共有やダブルチェックの徹底など、小さな改善の積み重ねが事故の予防につながります。
また、個人の知識やスキルのアップデートも効果的であるため、研修や勉強会への参加もおすすめです。
ミスの経験を糧に、より良い看護を目指して前に進んでいきましょう。
まとめ
看護師の取り返しのつかないミスは、投薬ミスや患者取り違え、申し送りミスなど、誰にでも起こり得るものです。
ミスをしてしまったときには、速やかに上司に報告し、迅速に対応することが何より大切です。
また、落ち込んだときは一人で抱え込まず、信頼できる人に相談しながら、気持ちを切り替えていきましょう。
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無理のない働き方で、少しずつ現場に戻る一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
よくある質問
ここでは、よくある質問についてお答えします。
看護師の中堅でもミスをすることはある?
ミスは新人看護師だけでなく、中堅やベテランの看護師にも起こり得るものです。
経験が豊富であっても、慣れによる油断や確認不足が原因となるケースは少なくありません。
また、中堅看護師は受け持ち患者数が多かったり、後輩指導などの追加業務を抱えていたりすることで、かえってミスが起こりやすい環境にある場合もあります。
「自分は大丈夫」という思い込みを捨て、基本に立ち返って慎重に業務を行うことが大切です。
経験を積んだからこそ、初心を忘れず指差し呼称やダブルチェックを徹底しましょう。
看護師がやばいインシデントを起こして立ち直れないときは?
重大なインシデントを起こしてしまい立ち直れないときは、一人で抱え込まないことが大切です。
職場の上司や同僚、産業医、カウンセリング窓口など、相談できる相手に気持ちを打ち明けてみましょう。
なお、強い不安感や焦燥感が続いたり、身体的な不調が出たりしている場合は、心が限界を感じているサインかもしれません。
必要に応じて休職や部署異動、転職なども選択肢として考えてみましょう。
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