KANTAN介護人材レポート #007
堺市高齢者福祉圏域の介護人材不足は「不足」なのか?
認定者数は増えない。それでも、介護を支える人材が必要になる理由
この記事で書いていること
この記事では、
・堺市高齢者福祉圏域とはどのような地域なのか
・堺市の要支援・要介護認定者数が2040年に向けてどう変化するのか
・認定者総数がほぼ横ばいから減少する一方、要介護3~5は増えること
・85歳以上人口が増え、高齢化率も上昇していくこと
・人口と生産年齢人口が減る中で、介護を支える人材をどう確保するのか
・介護人材不足を「人数不足」だけでなく「人材循環」から考える視点
について整理しています。
本記事は、大阪府の介護人材不足を8つの高齢者福祉圏域から考える「KANTAN介護人材レポート」の第7回です。
#001の大阪市では「巨大な需要と都市部の採用競争」。
#002の豊能では「これから大きく伸びる介護需要」。
#003の三島では「増える需要と重くなる介護需要」。
#004の北河内では「すでに存在する大きな介護需要をどう支え続けるか」。
#005の中河内では「需要総数はほぼ横ばいでも、重度者は増える」。
#006の南河内では「人口が減る中で増える介護需要を、広い地域でどう支えるか」。
そして今回の堺市では、さらに違う動きが見えてきます。
2040年度に向けて、要支援・要介護認定者の総数はわずかに減少する見込みです。
それでも、介護人材の問題が小さくなるとは限りません。
なぜなら、その中身が変わっていくからです。
堺市高齢者福祉圏域とは
堺市高齢者福祉圏域は、堺市1市で構成される高齢者福祉圏域です。
大阪府では、高齢者福祉圏域と二次医療圏、医療介護総合確保区域を一致させています。
そのため堺市では、医療と介護を同じ地域単位で考えることができます。
堺市は政令指定都市であり、一つの市だけで大きな人口と介護需要を抱えています。
2025年9月末時点で、65歳以上人口は228,856人。
総人口に占める高齢化率は**28.3%**です。
そのうち75歳以上は143,213人、85歳以上は42,167人となっています。
2026年度約6.1万人から、2040年度約6.1万人へ
大阪府の「大阪府高齢者計画2024」によると、堺市の要支援・要介護認定者数は、
2024年度 60,269人
2025年度 60,743人
2026年度 61,422人
2040年度 60,579人
と推計されています。
2026年度から2040年度では、
843人減少。
約1.4%の減少です。
これまで見てきた豊能や三島のように、介護需要が大きく伸びる地域とは明らかに違います。
数字だけを見ると、
「堺市では介護需要のピークが近く、将来的には人材不足も少し楽になるのではないか」
と思うかもしれません。
しかし、要介護度別に見ると違う姿が見えてきます。
要支援は減る。しかし、要介護3~5は増える
2026年度と2040年度を比較すると、
要支援1 13,196人 → 11,922人
要支援2 8,210人 → 7,759人
要介護1 11,450人 → 10,955人
要介護2 8,351人 → 8,466人
要介護3 6,769人 → 7,033人
要介護4 8,085人 → 8,706人
要介護5 5,361人 → 5,738人
と推計されています。
要支援1・2、要介護1は減少します。
一方で、
要介護3は約3.9%増。
要介護4は約7.7%増。
要介護5は約7.0%増。
要介護3~5を合計すると、
2026年度 20,215人
2040年度 21,477人
となり、1,262人、約6.2%増加します。
認定者全体では約1.4%減。
それでも、より多くの介護を必要とする層は約6%増える。
つまり堺市では、
「介護を必要とする人数」が増えるのではなく、「必要となる介護の中身」が変わっていく
と見る方が実態に近いのかもしれません。
堺市自身の最新データでも、同じ方向が見える
堺市が2026年1月に公表したデータでは、2025年9月末時点の65歳以上の要支援・要介護認定者数は61,428人、認定率は**26.8%**です。
年齢別に見ると、
65~74歳では認定率6.6%。
75~84歳では26.1%。
そして**85歳以上では69.6%**に達します。
さらに堺市では、認定者数は2030年頃に64,060人まで増えた後、2040年には59,900人程度へ減少すると見込んでいます。
つまり堺市でも、
高齢者人口そのものと、介護を必要とする人の動きは単純には一致しません。
85歳以上人口は、これからも増える
ここで重要になるのが85歳以上人口です。
堺市では75歳以上人口は2027年頃をピークに減少へ転じる一方、85歳以上人口はその後も増加が続くと見込まれています。
2025年9月末時点でも、85歳以上人口は42,167人。
そして85歳以上では約7割が要支援・要介護認定を受けています。
そのため、
「高齢者人口が今後どうなるか」
だけではなく、
高齢者の年齢構成がどう変わるか
を見る必要があります。
85歳以上人口が増えれば、
身体介護。
認知症ケア。
医療との連携。
在宅支援。
看取り。
など、より複雑な支援が必要になる可能性があります。
人口は減る。高齢化率は33.7%へ
堺市の「高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」では、2040年の市人口は70万人を下回ると推計されています。
一方で、高齢化率は現在の28%台から、2040年には**33.7%**まで上昇する見込みです。
さらに、15~64歳の生産年齢人口は大きく減少するとされています。
つまり堺市では、
介護認定者総数はほぼ増えない。
一方で、
85歳以上人口は増える。
重度の要介護者も増える。
そして、
支える側となる生産年齢人口は減っていく。
この組み合わせが、堺市の介護人材問題を考えるうえで重要です。
「利用者が増えないなら、人も増やさなくていい」のか
ここで、一つ疑問が生まれます。
介護認定者数が2026年度の約6.1万人から2040年度も約6.1万人なのであれば、
「介護職員も今と同じくらいいればよい」
と考えられるでしょうか。
介護現場では、利用者一人ひとりに必要となる支援が同じではありません。
要介護度が高い人が増えれば、
一人の利用者に必要となる介護の時間。
専門性。
多職種との連携。
夜間や緊急時の対応。
なども変わる可能性があります。
つまり、
介護需要は「人数」だけでは測れません。
堺市はそのことが非常に分かりやすく現れる地域です。
介護サービスの量も、単純には減らない
大阪府の推計では、堺市の居宅介護支援・介護予防支援のうち介護サービス利用見込みは、
2026年度 25,752人/月
2040年度 26,033人/月
と、ほぼ同水準からわずかに増える見込みです。
一方、堺市自身の計画では、介護・予防サービス等給付費について、2026年度の約859億円から2030年度には約911億円へ増加する見込みが示されています。
利用者数だけではなく、
どのようなサービスを、どれくらい必要とするのか
まで見なければ介護需要の将来は分かりません。
政令指定都市だからこその「都市内の人材競争」
堺市は一つの市で一つの圏域を構成しています。
南河内のように、6市2町1村にまたがる広域圏ではありません。
しかし、大都市には別の難しさがあります。
介護施設。
訪問介護。
通所介護。
病院。
訪問看護。
障害福祉。
その他のサービス。
働く人には、多くの選択肢があります。
そのため堺市では、
「地域に人がいるか」だけではなく、「その中で自施設が選ばれるか」
という問題もあります。
これは#001大阪市にも似た都市型の課題です。
ただ堺市の場合は、
介護需要の総数が大幅に伸びない一方で、重度化と高齢化が進む。
つまり、
限られた介護人材を単純に増やす競争ではなく、必要な場所へどうつなぎ、長く働いてもらうか
の重要性が高まります。
「採り合い」だけでは、地域の介護力は増えない
ある堺市内の施設が、別の堺市内の施設から介護職を一人採用したとします。
その施設では一人増えます。
しかし、堺市全体で介護を支える人数は変わりません。
生産年齢人口が減る中で、事業者同士が現在働いている人だけを採り合い続けても、地域全体の介護力は増えません。
だからこそ必要になるのが、
今まで十分に介護現場とつながっていなかった人を、どう働ける状態にするのか
という視点です。
地域には、まだつながっていない「働く力」がある
一度介護現場を離れた人。
常勤では働けない人。
週に数日なら働ける人。
短時間なら働ける人。
子育てや家族介護と両立したい人。
副業として介護に関われる人。
生活環境に合わせて働き方を変えたい人。
こうした人たちも、地域に存在する働く力です。
支える側の母数が減っていくのであれば、
「週5日働ける一人」を探すだけではなく、「少しずつなら働ける複数の人」が現場とつながれる仕組み
も必要になります。
「働ける」と「戻れる」の間にあるもの
しかし、働ける時間があるからといって、すぐ現場に戻れるとは限りません。
ブランクが不安。
知らない職場へ入るのが怖い。
人間関係が分からない。
仕事内容が自分に合うか分からない。
いきなり長期勤務を決めるのは難しい。
私たちは看護師について、こうした状態を**「戻れない構造」**と考えてきました。
介護でも同じように、
求人がある。
働ける人もいる。
でも両者がつながらない。
ということがあります。
これは「人がいない」という人数不足だけではありません。
接続不足です。
スポット勤務を、一度きりで終わらせない
スポット勤務は、急な欠員を埋めるための働き方として広がっています。
でも私たちは、それだけではないと考えています。
一度、短い時間だけ働いてみる。
働く人は、
施設を見る。
仕事内容を知る。
職場の雰囲気を知る。
施設側も、
その人の働き方を見る。
人柄を知る。
そこで、
「ここならまた働けるかもしれない。」
「また来てもらいたい。」
という関係が生まれることがあります。
スポット勤務を、働く人と現場の接続点にする。
そして、それを一度きりで終わらせない。
人口減少が進む堺市では、この考え方にも意味があると考えています。
堺市で考えたい「人材循環」
堺市では、2040年度に向けて要支援・要介護認定者総数は大きく増えません。
しかし、
85歳以上人口は増える。
要介護3~5は増える。
人口は減る。
生産年齢人口も減る。
この地域で必要なのは、
「とにかく採用人数を増やす」
ことだけではありません。
今いる人が長く働く。
一度離れた人が戻る。
短い時間から働く。
生活に合わせて働き方を変える。
一度つながった施設との関係を続ける。
私たちは、こうした状態を**「人材循環」**という視点から考えています。
人材循環とは、
限られた人材を施設同士で奪い合うのではなく、
地域に存在する働く力が現場へ入り、戻り、働き方を変えながら地域を支え続けられる状態をつくること。
介護需要の総数がほぼ変わらない堺市だからこそ、
「新しく何人採るか」だけではなく、
今ある働く力をどう持続的につなぐか
が重要になるのではないでしょうか。
KANTAN!が考えること
KANTAN!は、2026年9月勤務分から介護職求人の掲載を開始します。
私たちが目指しているのは、スポット勤務を増やすことだけではありません。
まず、一度働いてみる。
働く人が現場を知る。
現場も働く人を知る。
そして、一度きりで終わらせず、その先につなげる。
そのために私たちが考えているのが**「ナラシワーク™」**です。
ナラシワーク™とは、入職や継続勤務を判断する前に、実際の現場で一緒に働きながら、お互いの相性や働き方を確認する仕組みです。
スポット勤務。
ナラシワーク。
採用。
定着。
それぞれを別々のものではなく、一つの流れとしてつなげていく。
KANTAN!は、看護・介護のスポット勤務とナラシワーク™を通じて、地域の医療・介護人材が働き、戻り、働き方を変えながら循環できる入口をつくることを目指しています。
まとめ
堺市高齢者福祉圏域では、要支援・要介護認定者数が、
2026年度 61,422人
2040年度 60,579人
となり、約1.4%減少すると推計されています。
しかし、要介護3~5は、
2026年度 20,215人
2040年度 21,477人
へ増加。
約6.2%増となります。
さらに堺市では85歳以上人口が今後も増加し、高齢化率は2040年に33.7%まで上昇する一方、市人口と生産年齢人口は減っていく見込みです。
つまり堺市の介護人材不足は、
「介護を必要とする人数が増え続けるから、人が足りなくなる」という単純な問題ではありません。
人数はほぼ変わらない。
しかし、高齢化は進む。
重度者は増える。
支える働き手は減る。
だからこそ、
「何人を支えるのか」から、「変化する介護需要を、誰がどう支え続けるのか」へ。
介護人材確保の考え方を変えていく必要があります。
#001大阪市では「巨大な需要と都市部の採用競争」。
#002豊能では「大きく伸びる介護需要」。
#003三島では「増える需要と重くなる介護需要」。
#004北河内では「大きな需要をどう支え続けるか」。
#005中河内では「需要総数は横ばいでも重度者が増える」。
#006南河内では「人口減少と距離の問題」。
そして#007堺市では、
「認定者数は増えない。それでも、重度化と働き手減少によって人材課題は残る」。
また一つ、違う介護人材不足の姿が見えてきました。
一つの「介護人材不足」ではなく、地域ごとに異なる「複数の介護人材不足」がある。
堺市の数字は、そのことをよく示しています。
【出典】
・大阪府「大阪府高齢者計画2024」
・堺市「高齢者を取り巻く現状」
・堺市「高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(令和6~8年度)」