看護師の給料が低い理由とは?割に合わないと感じた時の対処法を解説
看護師として働いているものの、給料が安いのではと感じている方は少なくありません。
夜勤や残業が多く、重労働である一方で、給料が見合っていないと思う看護師も多いのが現状です。
本記事では、看護師の給料に対する不満の背景や実態、そして給料アップを実現するための具体的な方法を解説します。
看護師の給料について悩む方やキャリアアップを考えている方に向けて、実践的な情報をお届けします。
看護師の給料は本当に低い?
厚生労働省の最新統計データによると、看護師の給与水準は決して低いわけではありません。
令和5年度の賃金構造基本統計調査では、看護師の平均月給は約35.2万円、全職種平均は約34.2万円となっています。
この数字を見る限り、看護師の給与は一般的な職種と比較してむしろ高い水準にあることがわかります。
しかし、単純な金額の比較だけでは、看護師の給与の実態を正確に把握することはできません。
なぜなら、看護師の仕事には一般的な職種とは異なる特殊性があるからです。
2023年 看護師および全職種の平均給与額・所定内給与額(単位:千円)
きまって支給する現金給与額 | 所定内給与額 | |
看護師 | 352.1 | 319.3 |
全職種 | 341.9 | 313.1 |
看護師の給料が安いと感じる理由
看護師が給料に不満を感じる背景には、業務の特殊性や労働環境に関する様々な要因が存在します。
以下では、現場で働く看護師たちが給料を安いと感じる主な理由について詳しく見ていきましょう。
身体的・精神的負荷が大きい
看護師の仕事は、立ち仕事が基本で患者さんの移送や介助など力仕事も多く、腰痛が職業病と言われるほどの重労働です。
さらに、看護助手の人手不足により、本来は補助を受けられる業務も看護師が担わざるを得ない状況が続いています。
加えて、患者さんの命を預かる重責による精神的なプレッシャーも大きく、医師や他のスタッフ、患者家族とのコミュニケーションにおけるストレスも無視できません。
このように身体的にも精神的にも大きな負荷がかかる仕事内容に対して、給与が十分に見合っていないと感じる看護師が多いのです。
夜勤の拘束時間が長い
夜勤、特に2交代制勤務では16時間以上の長時間勤務が一般的です。
さらに、患者さんの状態把握や申し送りのために定時より早く出勤する必要があり、実質的な拘束時間は更に長くなります。
夜勤手当は1回あたり4,000円から11,000円程度と病院によって差がありますが、長時間の拘束や身体的負担、生活リズムの乱れを考慮すると、決して十分な額とは言えません。
また、人手不足により夜勤の回数が増える傾向にあり、心身への負担が重くのしかかっています。
残業代の申告がしづらい
医療現場では、患者さんの急変対応や記録作成のための残業が日常的に発生します。
しかし、「看護師の残業は当たり前」という職場の雰囲気や、煩雑な申請手続きにより、残業代を請求しにくい状況が続いています。
特に、早出残業や休憩時間での作業は、暗黙の了解として無償労働になりがちです。
このように、実際の労働時間に見合った給与を受け取れていない実態が、給料への不満を生む一因となっています。
危険手当が支給されない
看護師は感染症のリスクや患者さんからの暴言・暴力など、常に危険と隣り合わせの環境で働いています。
新型コロナウイルス対応では、最前線で患者さんのケアにあたりながら、自身や家族への感染リスクと向き合い続けてきました。
しかし、多くの医療機関では危険手当が設定されておらず、このようなリスクの高い業務に対する適切な評価や手当が不足しています。
命を預かる専門職でありながら、危険に見合った待遇が得られていない現状があります。
業務時間外に勉強会がある
医療の進歩は日進月歩であり、看護師には常に最新の医療知識や技術の習得が求められます。
そのため、多くの医療機関では新しい医療機器の使用方法講習や、最新の感染対策研修、症例検討会などが定期的に実施されています。
これらの勉強会や研修は通常の業務時間外に設定されることが多く、月に数時間から十数時間に及ぶこともあります。
参加は実質的に必須とされながらも、「自己研鑽」という名目で残業代の対象外とされるのが一般的です。
このように、専門性の維持・向上のために必要不可欠な学習時間が、実質的な無償労働となっているのが現状です。
年齢による昇給率が低い
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、看護師の給与の伸びは全職種平均と比較して緩やかです。
例えば35~39歳では、看護師の所定内給与額が約30.5万円なのに対し、全職種平均は約31.5万円とすでに逆転しています。
この差は年齢とともに広がり、50~54歳では看護師が約35.5万円、全職種平均が約37.1万円と、約1.6万円もの開きが生じています。
長年の経験や熟練した技術が給与に十分反映されない現状は、看護師のモチベーション低下や離職の一因となっています。
特に中堅層以降の昇給率の低さは、キャリアを重ねても給与面での評価が伴わないという、看護師特有の待遇の課題を浮き彫りにしています。
2023年 看護師および全職種の年齢別・平均所定内給与額(単位:千円)
看護師
| 全職種
| |
20~24歳
| 263.0
| 224.6
|
25~29歳
| 291.6
| 258.3
|
30~34歳
| 302.2
| 286.0
|
35~39歳
| 304.7
| 314.8
|
40~44歳
| 323.2
| 338.8
|
45~49歳
| 343.5
| 355.7
|
50~54歳
| 355.0
| 371.1
|
55~59歳
| 365.6
| 376.4
|
60~64歳
| 317.9
| 305.9
|
65~69歳
| 316.9
| 269.8
|
看護師の給料は本当に割に合わないのか
「夜勤明けにそのまま日勤をこなすことも珍しくないのに、手取りは30万円を切る」「残業しても申告しづらい雰囲気で、実質タダ働き」こうした声は看護師の間でよく聞かれます。
統計上の平均給与は全職種と比べて高くても、命を預かる緊張感や体力的な消耗、時間外の勉強会など、数字に表れない負担が大きいために、割に合わないと感じる看護師が一定数いるのが実態です。
職場による看護師の給料の違い
医療機関の種類や規模によって、看護師の給与水準には大きな差があります。
以下では、代表的な職場による給与の違いとその特徴を見ていきましょう。
大学病院の看護師の給料は比較的高い
大学病院をはじめとする大規模病院の看護師の給与は、相対的に高水準となっています。
日本看護協会の調査によると、設置主体別の給与総額では、私立学校法人が運営する病院が月額約37万円と最も高く、次いで日本赤十字社の約35.4万円、国立病院の約35万円と続きます。
これは高度な医療を提供する機関として、専門性の高い看護師の確保・育成に力を入れているためです。
ただし、その分、業務の専門性や責任も重くなる傾向にあります。
設置主体・勤続 10年、31~32歳、非管理職の看護師の月額給与(単位:円)
設置主体
| 平均税込給与総額
|
国立
| 349,836
|
公立
| 346,508
|
私立学校法人
| 369,216
|
日本赤十字社
| 354,412
|
済生会
| 339,339
|
厚生連
| 324,000
|
医療法人
| 314,002
|
社会福祉法人
| 334,453
|
全体
| 326,675
|
クリニックの看護師の給料は病院より低い
一般的にクリニックで働く看護師の給与は、大規模病院と比較して低い水準にあります。
日本看護協会の調査では、クリニックの看護師の平均月収は約35.5万円で、病院勤務の約38.6万円と比べて約3万円低くなっています。
これは夜勤手当がないことや、規模の小さい医療機関では人件費に制約があることが主な要因です。
ただし、日勤のみで働けることや、休日が定期的に取得できるなど、ワークライフバランスの面でメリットがあります。
2021年 基本給額、税込給与総額(現在の勤務場所) 【正規雇用職員(フルタイム)対象】
平均税込給与総額
| |
病院
| 386,046
|
診療所(クリニック)
| 354,563
|
助産所
| 371,675
|
行政
| 397,324
|
訪問看護ステーション
| 367,775
|
介護施設
| 346,236
|
看護系教育機関
| 406,168
|
参照:日本看護協会 医療政策部|2021年 看護職員実態調査
看護師不足なのに給料が上がらないのはなぜか
深刻な看護師不足が続いているにもかかわらず、給与水準の大幅な改善が見られない背景には、以下のような構造的な問題が存在します。
需要と供給のバランスが崩れている
看護師の需要は高齢化社会の進展とともに年々増加しており、多くの医療機関が人材確保に苦心しています。
一方で、看護師免許を持ちながら、厳しい労働条件や待遇への不満から現場を離れる人も多く存在します。
本来であれば、このような需給ギャップは給与の上昇につながるはずですが、医療機関の経営状況や診療報酬の制約により、人件費を大幅に増やすことができません。
結果として、需要と供給のアンバランスが解消されないまま、給与水準も据え置かれる状況が続いているのです。
病院の経営状況が悪化している
医療機関の収入は主に診療報酬から成り立っていますが、その配分には様々な制約があります。
高額な医療機器の導入や設備の維持管理費用が年々増加する一方で、診療報酬の伸びは限定的です。
また、患者獲得のための施設整備や医療の質向上のための投資も必要となり、人件費に十分な予算を振り向けられない状況が続いています。
特に中小規模の病院では、経営の維持が精一杯で、看護師の給与改善まで手が回らないケースも少なくありません。
看護師の待遇改善への意識が低い
医療現場では依然として、看護師は医師の指示のもとで働く存在という認識が根強く残っています。
そのため、専門職としての適切な評価や待遇改善の優先度が低くなりがちです。
また、看護師自身も給与交渉などを積極的に行う文化が根付いておらず、不満を抱えながらも現状を受け入れてしまう傾向があります。
看護師の専門性や責任の重さに見合った待遇を実現するには、医療機関と看護師双方の意識改革が必要とされています。
看護師の給料を上げるには?看護師の給料が安くて辞めたいと感じた時の対処法
給与アップを実現するためには、複数のアプローチが考えられます。
それぞれの方法には特徴やメリット・デメリットがありますので、自身のキャリアプランに合わせて最適な選択をすることが重要です。
- 給料の高い病院に転職する
- キャリアアップを目指す
- スキルアップして時給交渉する
- 副業で収入を増やす
給料の高い病院に転職する
給与アップの最も直接的な方法は、より条件の良い職場への転職です。
大学病院や大規模総合病院は比較的給与水準が高く、また夜勤手当なども充実している傾向にあります。
病院選びの際は、基本給だけでなく、諸手当の内容や昇給制度なども含めて総合的に検討することが重要です。
ただし、給与が高い職場は一般的に業務量も多く、責任も重くなりがちですので、自身の経験やスキルレベルを踏まえた上で判断する必要があります。
キャリアアップを目指す
看護師のキャリアアップには、大きく分けて二つの方向性があります。
一つは専門看護師や認定看護師として、特定分野のスペシャリストを目指す道。
もう一つは看護管理者として組織をまとめる道です。
どちらの道を選んでも、それに応じた給与の上昇が期待できます。
以下では、それぞれのキャリアアップの方法と、それによって得られる待遇について紹介します。
専門看護師・認定看護師の取得
専門看護師や認定看護師の資格を取得することで、専門性を高め、より高い給与を得ることができます。
日本看護協会の調査によると、専門看護師手当は平均月額11,279円、認定看護師手当の平均月額は8,530円程度でした。
また、これらの資格は転職時の交渉材料としても有効で、キャリアアップの重要な選択肢となります。
資格取得には一定期間の実務経験と専門的な学習が必要となりますが、長期的なキャリア形成の観点からも有益な投資といえます。
参照:公益社団法人日本看護協会「2022年度専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」
管理職への昇進
看護師長や主任などの管理職ポストを目指すことも、給与アップの有効な手段です。
管理職になると基本給の上昇に加え、役職手当が支給されます。
ただし、管理職は人材育成や部署運営などの責任も伴うため、リーダーシップやマネジメントスキルの向上が求められます。
また、残業代が支給されなくなる場合もあるため、総合的な収入を考慮した上で判断する必要があります。
スキルアップして時給交渉する
日々の業務で専門的なスキルを磨き、実績を積み重ねることで、給与交渉の際の強みとすることができます。
特に特定の診療科での経験を深めることや、新しい医療技術の習得は、より高い待遇を得るための重要な要素となります。
また、研修や勉強会への積極的な参加も、スキルアップの機会として活用できます。
副業で収入を増やす
看護師の資格や経験を活かした副業に取り組むことで、収入アップを図ることができます。
具体的には、訪問看護や健康診断の補助業務、医療機器メーカーでの技術指導などが考えられます。
特に近年は、看護師・介護職に特化したスキマバイトサービス「KANTAN!」のような、空いた時間を活用して働けるプラットフォームも登場しています。
こうしたサービスでは、シフト制で自分の都合に合わせて働く日を選べるため、本業との両立がしやすいのが特徴です。
ただし、副業を始める際は、本業に支障をきたさないよう、勤務先の副業規定を確認し、適切な範囲で行うことが重要です。
また、過度な労働による健康への影響にも注意が必要です。
まとめ
看護師の給与は、統計データ上では全産業平均と比べて低くありませんが、命を預かる重責や身体的負担、長時間の夜勤といった業務の特殊性を考えると、多くの看護師が現状の給与に不満を感じているのが実態です。
職場によって給与水準は大きく異なり、医療機関の経営状況や待遇改善への意識の低さなど、構造的な問題も存在しています。
しかし、より条件の良い職場への転職や、専門・認定看護師の資格取得、「KANTAN!」のようなスキマバイトサービスを活用した副業など、給与アップを実現する方法は確実にあります。
自身のライフプランやキャリアプランを踏まえて、給与面だけでなく、ワークライフバランスや自己成長の機会も含めて総合的に判断し、最適な選択をすることが大切です。
看護師の給料に関するよくある質問
Q. 看護師が年収1000万円を目指すことはできる?
看護師が年収1000万円を実現する方法はいくつかあります。
特定行為研修を修了した高度専門職として大学病院や専門病院に勤務する、専門看護師として複数の役職手当を積み上げる、管理職(看護部長・副院長兼務)まで昇進するといった方法が代表的です。
また、クリニックの開業支援や医療系企業のコンサルタント、看護師資格を活かしたフリーランス活動と本業の組み合わせで達成するケースもあります。
いずれも高い専門性と長年の実績が前提となり、簡単ではありませんが、キャリアを戦略的に積み上げることで現実的な目標となります。
Q. 看護師が給料をあげてほしい場合、どこに訴えればいい?
現職での給料アップを求める際は、まず直属の上長や師長への直接交渉が基本です。
その際、「担当業務の範囲が広がった」「資格を取得した」など具体的な実績やスキルを根拠として示すと説得力が増します。
その他、昇給制度や資格手当の申請漏れがないかも確認が必要です。
認定看護師手当や夜勤手当など、申請しなければ支給されない手当が見落とされているケースもあります。