KANTAN!(カンタン)

南河内高齢者福祉圏域の介護人材不足は「不足」なのか?

人口が減る地域で、介護需要は増える。広い生活圏を誰が支えるのか

 

この記事で書いていること

この記事では、

・南河内高齢者福祉圏域とはどのような地域なのか
・要支援・要介護認定者数が2040年に向けてどう変化するのか
・人口減少が進む一方で、介護需要は増えること
・要介護3~5の重度層は、認定者全体を上回るペースで増えること
・6市2町1村、約290平方キロメートルという広い地域で人材を確保する難しさ
・介護人材不足を「人数」だけでなく「距離」「接続」「人材循環」から考える視点

について整理しています。

本記事は、大阪府の介護人材不足を8つの高齢者福祉圏域から考える「KANTAN介護人材レポート」の第6回です。

#001の大阪市では「巨大な需要と都市部の採用競争」。

#002の豊能では「これから大きく伸びる介護需要」。

#003の三島では「増える需要と重くなる介護需要」。

#004の北河内では「すでに存在する大きな介護需要をどう支え続けるか」。

#005の中河内では「需要総数はほぼ横ばいでも、重度者は増える」。

そして今回の南河内には、また違う特徴があります。

それは、

地域の人口が減っていく中でも、介護を必要とする人は増えていくこと。

さらに南河内は、6市2町1村にまたがる広い地域です。

南河内の介護人材不足を考えるとき、「何人いるか」だけでは見えてこない問題があります。

 

南河内高齢者福祉圏域とは

南河内高齢者福祉圏域は、

富田林市、河内長野市、松原市、羽曳野市、藤井寺市、大阪狭山市、太子町、河南町、千早赤阪村

の6市2町1村で構成されています。

大阪府では、高齢者福祉圏域を二次医療圏および医療介護総合確保区域と一致させています。つまり、医療と介護を一体的に考えるための地域単位でもあります。

南河内地域の面積は約290平方キロメートル。

大阪府全体の約15%を占めます。

ここが、これまで取り上げてきた都市部の圏域とは少し違うところです。

同じ「南河内」という一つの圏域でも、

松原市のように大阪市に近い地域もあれば、

河内長野市、河南町、太子町、千早赤阪村など、より広い地域に生活圏が広がる自治体もあります。

人がいることと、必要な現場まで人が届くことは、必ずしも同じではありません。

 

2026年度約4.3万人から、2040年度約4.5万人へ

大阪府の「大阪府高齢者計画2024」によると、南河内圏域の要支援・要介護認定者数は、

2024年度 41,180人
2025年度 41,933人
2026年度 42,616人
2040年度 44,818人

と推計されています。

2026年度から2040年度までに、

2,202人増加。

増加率は、**約5.2%**です。

三島の約20%増ほど大きな伸びではありません。

しかし、南河内ではこの数字を人口動態と一緒に見る必要があります。

 

人口は減る。それでも介護需要は増える

大阪府の地域医療構想に掲載された将来人口推計を見ると、南河内では人口減少が進んでいくとされています。

例えば男性人口は、

2025年 268,191人
2040年 223,378人

へ減少する推計です。

15~59歳の男性だけを見ると、

2025年 143,787人
2040年 108,637人

まで減少します。

もちろん、介護職を担うのはこの層だけではありませんし、この数字だけから介護人材数そのものを推計することはできません。

ただ、南河内で起きている大きな方向は見えてきます。

地域の人口は減る。

その一方で、

要支援・要介護認定者は約4.3万人から約4.5万人へ増える。

つまり南河内では、

「地域に暮らす人が減れば、介護需要も減る」という単純な構造にはなっていません。

ここが重要です。

 

さらに、要介護3~5は約12%増える

要介護度別に2026年度と2040年度を比較すると、

要支援1 7,499人 → 7,167人
要支援2 5,852人 → 5,853人
要介護1 8,039人 → 8,213人
要介護2 6,594人 → 7,113人
要介護3 5,175人 → 5,771人
要介護4 5,645人 → 6,376人
要介護5 3,812人 → 4,325人

と推計されています。

特徴がはっきりしています。

要支援1は減少。

要支援2はほぼ横ばいです。

一方で、

要介護3は約11.5%増。
要介護4は約13.0%増。
要介護5は約13.5%増。

要介護3~5を合計すると、

2026年度 14,632人
2040年度 16,472人

となります。

1,840人、約12.6%の増加です。

認定者全体は約5.2%増。

しかし、要介護3~5は約12.6%増。

南河内でも、介護需要の「人数」だけではなく、必要となるケアの重さまで見る必要があります。

 

南河内では「距離」も人材不足になる

ここまでは#003三島や#005中河内にも共通する「重度化」の話です。

しかし、南河内にはもう一つ見ておきたい特徴があります。

地域の広さです。

南河内地域は約290平方キロメートルあり、大阪府全体の約15%を占めます。

そして、その中に6市2町1村があります。

介護人材を考えるとき、

「南河内に介護職が何人いるか」

だけでは十分ではありません。

実際に働く人にとって重要なのは、

自宅から何分で通えるのか。

電車で行けるのか。

車が必要なのか。

勤務開始時間に間に合うのか。

短時間勤務でも通勤時間に見合うのか。

といった現実的な条件です。

例えば地域全体では働ける人が存在していても、

その人が働ける場所と、人を必要としている施設の場所が合わなければ、現場には届きません。

人材不足には、「人数」の問題だけでなく、地理的な接続の問題もあります。

 

「4万5千人を支える」という数字だけでは見えない

2040年度の要支援・要介護認定者は44,818人。

しかし、その44,818人が一か所に暮らしているわけではありません。

都市部。

住宅地。

山間部。

市。

町。

村。

異なる生活圏に介護を必要とする人が暮らしています。

大阪府は、高齢者福祉圏域について、原則として圏域内でサービスが提供されることを目指すとしています。

つまり重要なのは、

「地域全体として介護サービスがある」だけではなく、必要な場所に必要なサービスと人材が届くこと。

南河内では、この視点がより重要になります。

 

人口減少地域ほど「採り合い」では限界がある

人材不足になれば、

求人を出す。

採用広告を増やす。

紹介会社を利用する。

待遇を改善する。

外国人材を活用する。

さまざまな方法があります。

どれも必要な取り組みです。

しかし、人口そのものが減っていく地域で、施設同士が同じ介護人材を採り合うだけでは、地域全体を支える人は増えません。

富田林市の施設が、河内長野市で働いていた人を採用する。

一つの施設では人材不足が改善します。

しかし南河内全体で見れば、介護を支える人数が一人増えたわけではありません。

だからこそ、

「誰を採用するか」だけでなく、「地域の中にある働く力をどう増やし、どう現場につなぐか」

という視点が必要になります。

 

地域には、まだ現場につながっていない「働く力」がある

介護を支える人は、現在フルタイムで働いている介護職だけではありません。

一度介護現場を離れた人。

子育て中の人。

家族の介護をしている人。

週に数日なら働ける人。

短時間なら働ける人。

副業として介護に関われる人。

年齢や生活環境に合わせて、働き方を変えたい人。

こうした人たちも、地域に存在する「働く力」です。

人口が減る地域だからこそ、

一人の人に週5日働いてもらえるかだけではなく、地域にある一人ひとりの「働ける時間」をどう生かすか。

その考え方が重要になっていきます。

 

しかし、「働ける場所」が遠ければ働けない

南河内では、ここにもう一つ条件が加わります。

時間です。

例えば、

「午前中だけなら働ける。」

という人がいたとしても、

片道1時間かかる施設では働きにくいかもしれません。

「週に1日なら働ける。」

という人でも、

自宅から近い施設なら選択肢になるかもしれません。

つまり、

働ける時間と、働ける場所を同時につなぐ必要があります。

これは単なる求人情報の問題ではありません。

地域に散在する働く力と介護現場を、どう細かく接続するかという問題です。

 

「戻れない構造」は、距離によっても生まれる

私たちはこれまで、看護師について**「戻れない構造」**という言葉を使ってきました。

働きたい。

資格や経験もある。

でも、

ブランクが不安。

知らない職場が怖い。

いきなり長期勤務を決められない。

そうした不安によって、現場へ戻る一歩が踏み出せない状態です。

介護でも同じことが起こり得ます。

そして南河内では、

「通える範囲に、自分に合う働き方があるか」

という地理的な条件も、その一歩を左右します。

人を必要としている施設がある。

働ける人もいる。

でも、つながらない。

私たちは、介護人材不足には「人数不足」だけではなく、こうした**「接続不足」**もあると考えています。

 

スポット勤務を「近くの現場とつながる入口」にできないか

そこでスポット勤務には、一つの可能性があります。

急な欠員を埋めるだけではありません。

まず一度、

自宅から通える現場で働いてみる。

短い時間から働いてみる。

働く人は、

通勤できるかを知る。

仕事内容を知る。

職場の雰囲気を知る。

一緒に働く人を知る。

施設側も、

その人の働き方や人柄を知る。

そこで、

「ここならまた働けそう。」

「また来てもらいたい。」

という関係が生まれることがあります。

一度きりのスポット勤務を、

地域の人と現場がつながる入口に変える。

広い生活圏を持つ南河内だからこそ、その入口を地域の中に増やしていく意味があります。

 

南河内で考えたい「人材循環」

南河内では、

人口が減っていく。

一方で、要支援・要介護認定者は増える。

さらに要介護3~5は約12.6%増える。

そして、その需要は約290平方キロメートルの地域に存在します。

この地域で必要なのは、

一つの施設に人を集めることだけではありません。

今いる人が働き続ける。

一度離れた人が戻る。

短時間から働く。

生活に合わせて働き方を変える。

自宅に近い現場とつながる。

一度つながった施設と関係を続ける。

私たちは、こうした状態を**「人材循環」**という視点から考えています。

人材循環とは、

限られた人材を施設同士で奪い合うのではなく、

地域に存在する働く力が現場へ入り、戻り、働き方を変えながら地域を支え続けられる状態をつくること。

南河内ではさらに、

その人材が「地域のどこにいるのか」まで考える必要があります。

 

KANTAN!が考えること

KANTAN!は、2026年9月勤務分から介護職求人の掲載を開始します。

私たちが目指しているのは、スポット勤務を増やすことだけではありません。

まず、一度働いてみる。

働く人が現場を知る。

現場も働く人を知る。

そして、一度きりで終わらせず、その先の働き方につなげる。

そのために私たちが考えているのが**「ナラシワーク™」**です。

ナラシワーク™とは、入職や継続勤務を判断する前に、実際の現場で一緒に働きながら、お互いの相性や働き方を確認する仕組みです。

スポット勤務。

ナラシワーク。

採用。

定着。

それぞれを別々のものではなく、一つの流れとしてつなげていく。

KANTAN!は、看護・介護のスポット勤務とナラシワーク™を通じて、地域の医療・介護人材が働き、戻り、働き方を変えながら循環できる入口をつくることを目指しています。

 

まとめ

南河内高齢者福祉圏域では、要支援・要介護認定者数が、

2026年度 42,616人
2040年度 44,818人

になると推計されています。

14年間で2,202人、約5.2%増です。

さらに要介護3~5は、

2026年度 14,632人
2040年度 16,472人

へ増加。

約12.6%増となります。

その一方で、南河内では人口減少が進んでいきます。

そして、南河内地域は6市2町1村、約290平方キロメートルに広がっています。

つまり南河内で考えるべきなのは、

「介護職が何人足りないのか」だけではありません。

人が減っていく地域で、介護需要は増える。

より重い介護を必要とする人も増える。

そして、その需要は広い地域に存在する。

だからこそ、

「地域にどれだけ人がいるか」から、「地域のどこにいる働く力を、どの現場へどうつなぐか」へ。

介護人材確保の考え方を広げる必要があります。

#001大阪市では「巨大な需要と都市部の採用競争」

#002豊能では「これから大きく伸びる介護需要」

#003三島では「増える需要と重くなる介護需要」

#004北河内では「大きな需要をどう支え続けるか」

#005中河内では「需要総数は横ばいでも、重度者が増える」

そして#006南河内では、

「人口が減る中で増える介護需要を、広い地域でどう支えるか」

同じ大阪府でも、介護人材不足の姿は同じではありません。

一つの「介護人材不足」ではなく、地域ごとに異なる「複数の介護人材不足」がある。

南河内の数字から見えてくるのは、

人材不足は「人数」だけではなく、「距離」と「接続」の問題でもある。

ということです。


【出典】

・大阪府「大阪府高齢者計画2024」 
・大阪府「大阪府地域医療構想」関連資料 
・大阪府「南河内地域/管内の概要」

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