KANTAN!(カンタン)

三島高齢者福祉圏域の介護人材不足は「不足」なのか?

介護需要が約20%増える地域で、より重い介護を誰が支えるのか

 

この記事で書いていること

この記事では、

・三島高齢者福祉圏域とはどのような地域なのか
・三島圏域の要支援・要介護認定者が2040年に向けてどう変化するのか
・介護需要全体の増加以上に、要介護3~5の層が増えること
・同じ圏域でも高齢化の状況が異なること
・介護需要の「量」と「重さ」が同時に増える地域を、誰が支えるのか
・介護人材不足を「接続」と「人材循環」から考える視点

について整理しています。

本記事は、大阪府の介護人材不足を8つの高齢者福祉圏域から考える「KANTAN介護人材レポート」の第3回です。

#001の大阪市では、大きな介護需要と都市部の採用競争。

#002の豊能では、2040年に向けて大きく伸びる介護需要。

そして三島圏域のデータを見ると、さらに別の特徴が見えてきます。

介護を必要とする人が増えるだけではありません。より多くの介護を必要とする人が、それ以上のペースで増えていきます。

 

三島高齢者福祉圏域とは

三島高齢者福祉圏域は、

高槻市、茨木市、摂津市、島本町

の3市1町で構成されています。大阪府では高齢者福祉圏域と二次医療圏が一致しており、医療と介護を同じ地域単位から考えることができます。

大阪と京都の間に位置し、鉄道や幹線道路などの交通網が発達した地域です。

一方、「三島」という一つの圏域であっても、高齢化の状況は同じではありません。

2025年の65歳以上人口の割合を見ると、

高槻市 29.3%
茨木市 24.2%
摂津市 25.5%
島本町 27.8%

となっています。

同じ圏域の中でも、高齢化の進み方には差があります。

介護人材不足を考えるとき、圏域全体の数字だけでなく、こうした地域差も見ておく必要があります。

 

2026年度約4.4万人から、2040年度約5.3万人へ

まず、介護需要の大きさを見てみます。

大阪府の「大阪府高齢者計画2024」によると、三島圏域の要支援・要介護認定者数は、

2024年度 41,092人
2025年度 42,496人
2026年度 43,861人
2040年度 52,621人

と推計されています。

2026年度から2040年度までに、

8,760人増加。

増加率にすると、**約20.0%**です。

つまり、現在約4.4万人の介護需要を支えている地域で、2040年度には約5.3万人を支える必要が出てきます。

#002で取り上げた豊能圏域も約18%増でした。

三島圏域では、それをさらに上回るペースで要支援・要介護認定者が増えると見込まれています。

 

しかし、本当に見るべき数字は「20%増」だけではない

三島圏域の特徴は、認定者全体の増加率だけではありません。

要介護度別に2026年度と2040年度を比較すると、

要支援1 8,401人 → 9,280人
要支援2 5,908人 → 6,626人
要介護1 8,753人 → 10,307人
要介護2 6,478人 → 7,954人
要介護3 5,391人 → 6,659人
要介護4 5,135人 → 6,951人
要介護5 3,795人 → 4,844人

と推計されています。

すべての区分で増加します。

ところが、増加率を見ると違いが出てきます。

要介護3は約23.5%増。

要介護4は約35.4%増。

要介護5は約27.6%増。

特に要介護4は、認定者全体の約20%という増加率を大きく上回ります。

つまり三島圏域では、

介護需要の「量」が増えると同時に、「重さ」も増していく。

ここが重要です。

 

「1万人増える」だけでは介護需要を捉えられない

介護人材不足を人数だけで考えると、

「利用者が約8,800人増えるので、それに対応する人材が必要になる」

という話になります。

しかし、実際の介護現場はそれほど単純ではありません。

要介護度が高くなれば、身体介護を必要とする場面も増えます。

認知症への対応。

移乗や排泄、食事などの日常生活支援。

医療職との連携。

在宅生活を継続するための支援。

介護を必要とする人の状態によって、現場に求められるケアは変わります。

だから三島圏域で2040年を考えるとき、

「何人を支えるのか」だけではなく、「どのような介護を支えるのか」

まで考える必要があります。

 

大阪府全体でも、85歳以上人口は増えていく

これは三島圏域だけの問題ではありません。

大阪府は2040年に向けて、医療と介護双方のニーズが高くなる85歳以上人口や、認知症高齢者が増加すると見込んでいます。

その一方で、生産年齢人口は引き続き減少するとしています。

つまり、

支援を必要とする人が増える。

そして、

より多くの支援を必要とする人も増える。

その一方で、

支える側となる働く世代は減っていく。

この三つが同時に進みます。

三島圏域の数字は、その変化を分かりやすく示しています。

 

「採用人数を増やす」だけで支えられるのか

介護需要が増えれば、当然、介護人材を増やす必要があります。

求人を出す。

採用広告を使う。

紹介会社を利用する。

待遇を改善する。

外国人材を活用する。

さまざまな方法があります。

どれも必要な取り組みです。

しかし、生産年齢人口そのものが減っていく中で、すべての事業者が同じ人材を採り合うだけでは限界があります。

ある介護施設が一人採用できても、その人が別の介護施設から移ってきたのであれば、三島圏域全体で介護を支える人が一人増えたわけではありません。

介護需要そのものが約20%増えていく地域では、

既存の介護人材を「どこが採るか」だけでなく、「介護を支える人そのものをどう増やすか」

という視点が必要になります。

 

地域にある「働く力」をどう生かすか

新しく介護を支える人は、常勤で就職する人だけではありません。

介護現場を一度離れた人。

子育てなどでフルタイム勤務が難しい人。

週に数日なら働ける人。

短時間なら働ける人。

副業として介護に関われる人。

年齢や生活環境に合わせて働き方を変えたい人。

こうした人たちも、地域に存在する「働く力」です。

労働力人口が減っていくのであれば、

一人ひとりに合わせた働き方を増やし、これまで十分に生かされていなかった働く力を現場につなぐこと

も、人材確保の一つになります。

 

しかし、「働ける」と「働く」の間には距離がある

ここで問題になるのが、私たちがこれまで看護師について考えてきた**「戻れない構造」**です。

資格や経験がある。

働く意思もある。

でも、

ブランクが不安。

知らない職場に入るのが怖い。

人間関係が分からない。

自分が今の介護現場で働けるか分からない。

いきなり長期勤務を決めるのは難しい。

そうした不安によって、働ける可能性のある人が現場につながらないことがあります。

求人がある。

働ける人もいる。

それでも、両者がつながらない。

介護人材不足には、

「人数不足」だけではなく、「接続不足」という側面もある。

私たちはそう考えています。

 

スポット勤務を「接続」の入口にできないか

そこで一つの入口になるのが、スポット勤務です。

もちろん、

急な欠員を埋める。

忙しい時間帯だけ人を増やす。

といった役割があります。

しかし、スポット勤務には別の役割もあります。

一度、現場で働いてみることです。

働く人は、

職場の雰囲気を知る。

仕事内容を知る。

一緒に働く人を知る。

施設側も、

その人の働き方を見る。

人柄を知る。

そこで、

「また働きたい。」

「また来てほしい。」

という関係が生まれることがあります。

一度きりの穴埋めだった勤務を、人と現場がつながる入口に変える。

介護を支える人そのものを増やしていくためには、こうした入口を増やすことも必要ではないでしょうか。

 

三島圏域で考えたい「人材循環」

三島圏域では、2026年度から2040年度までに要支援・要介護認定者が約20%増えます。

さらに要介護4は約35%増える見込みです。

今の不足を埋めるだけではありません。

これから増え、重くなっていく介護需要を支える仕組みを、今からつくる必要があります。

今いる人が働き続けられる。

一度離れた人が戻れる。

短時間から現場に入れる。

生活に合わせて働き方を変えられる。

一度つながった人と施設が関係を続けられる。

私たちは、こうした状態を**「人材循環」**という視点から考えています。

人材循環とは、限られた人材を施設同士で奪い合うのではなく、

地域に存在する働く力が現場へ入り、戻り、働き方を変えながら地域を支え続けられる状態をつくること

です。

介護需要の「量」と「重さ」の両方が増える三島圏域だからこそ、この視点は重要になっていくと考えています。

 

KANTAN!が考えること

KANTAN!は、2026年9月勤務分から介護職求人の掲載を開始します。

私たちが目指しているのは、スポット勤務を増やすことだけではありません。

まず、一度働いてみる。

働く人が現場を知る。

現場も働く人を知る。

そして、一度きりで終わらせず、その先の働き方につなげる。

そのために私たちが考えているのが「ナラシワーク™」です。

ナラシワーク™とは、入職や継続勤務を判断する前に、実際の現場で一緒に働きながら、お互いの相性や働き方を確認する仕組みです。

スポット勤務。

ナラシワーク。

採用。

定着。

それぞれを別々のものではなく、一つの流れとしてつなげていく。

KANTAN!は、看護・介護のスポット勤務とナラシワーク™を通じて、地域の医療・介護人材が働き、戻り、働き方を変えながら循環できる入口をつくることを目指しています。

 

まとめ

三島高齢者福祉圏域では、要支援・要介護認定者が、

2026年度 43,861人
2040年度 52,621人

へ増えると推計されています。

14年間で8,760人、約20.0%の増加です。

さらに、

要介護3 5,391人 → 6,659人
要介護4 5,135人 → 6,951人
要介護5 3,795人 → 4,844人

と、より多くの介護を必要とする層も大きく増えていきます。

特に要介護4は約35%増です。

三島圏域で問われているのは、

「今、人が足りないか」だけではありません。

これから介護を必要とする人が増える。

より多くの支援を必要とする人も増える。

その一方で、社会全体では働く世代が減っていく。

だからこそ、

「何人採用するか」から、「地域の働く力をどう増やし、どう現場につなぎ続けるか」へ。

介護人材確保の考え方そのものを広げる必要があります。

#001大阪市では「大きな需要と採用競争」。

#002豊能では「これから大きく伸びる介護需要」。

そして#003三島では、

「増える介護需要」と「重くなる介護需要」。

同じ大阪府でも、介護人材不足の姿は同じではありません。

一つの「介護人材不足」ではなく、地域ごとに異なる「複数の介護人材不足」がある。

三島圏域の数字からも、それが見えてきます。


【出典】

・大阪府「大阪府高齢者計画2024」 
・大阪府「高齢者福祉圏域図」 
・大阪府「医療計画における在宅医療の指標及び各圏域の参考指標の状況」

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