KANTAN介護人材レポート #008
泉州高齢者福祉圏域の介護人材不足は「不足」なのか?
広い地域で介護需要が増え、重度化も進む。誰が支えるのか
この記事で書いていること
この記事では、
・泉州高齢者福祉圏域とはどのような地域なのか
・要支援・要介護認定者数が2040年に向けてどう変化するのか
・認定者全体よりも、要介護3~5の重度層が大きく増えること
・広い地域に複数の市町が広がる中で、人材確保が難しくなる理由
・人口減少と介護需要増が同時に進む地域で、介護をどう支えるのか
・介護人材不足を「人数不足」だけでなく「接続」と「人材循環」から考える視点
について整理します。
本記事は、大阪府の介護人材不足を8つの高齢者福祉圏域から考える「KANTAN介護人材レポート」の第8回です。
#001の大阪市では「巨大な需要と都市部の採用競争」。
#002の豊能では「これから大きく伸びる介護需要」。
#003の三島では「増える需要と重くなる介護需要」。
#004の北河内では「すでに存在する大きな介護需要をどう支え続けるか」。
#005の中河内では「需要総数はほぼ横ばいでも、重度者は増える」。
#006の南河内では「人口が減る中で増える介護需要を、広い地域でどう支えるか」。
#007の堺市では「認定者数はほぼ横ばいでも、重度化と働き手減少が進む」。
そして最後の#008、泉州です。
泉州では、
介護を必要とする人そのものが増え、さらに重度の介護を必要とする人もそれ以上のペースで増えていく。
という、複数の課題が重なります。
泉州高齢者福祉圏域とは
泉州高齢者福祉圏域は、
岸和田市、泉大津市、貝塚市、泉佐野市、和泉市、高石市、泉南市、阪南市、忠岡町、熊取町、田尻町、岬町
の8市4町で構成されています。
大阪府南部に広がる、府内でも比較的広域な圏域です。
大阪府では高齢者福祉圏域を、二次医療圏や医療介護総合確保区域と同じ地域単位に設定しています。つまり泉州でも、医療と介護を一体で考えることができます。
同じ泉州でも、都市部に近い地域、沿岸部、郊外、町部など生活圏はさまざまです。
だから泉州の介護人材不足は、
「圏域全体に何人いるか」だけでは見えません。
人材が、必要な場所まで届くか。
そこまで考える必要があります。
2026年度約5.7万人から、2040年度約6.2万人へ
大阪府の最新公表資料では、泉州圏域の要支援・要介護認定者数は、
2024年度 55,100人
2025年度 56,120人
2026年度 57,087人
2040年度 62,205人
と推計されています。
2026年度から2040年度までに、
5,118人増加。
増加率は約9.0%です。
約5.7万人から約6.2万人へ。
泉州では、介護需要そのものが今後も増える見込みです。
それ以上に増えるのが、要介護3~5
要介護度別に2026年度と2040年度を比較すると、
要支援1 9,941人 → 9,884人
要支援2 8,508人 → 8,902人
要介護1 10,801人 → 11,573人
要介護2 9,345人 → 10,464人
要介護3 6,930人 → 7,911人
要介護4 6,744人 → 7,860人
要介護5 4,818人 → 5,611人
と推計されています。
ここで注目したいのは要介護3~5です。
2026年度の合計は、
18,492人。
2040年度には、
21,382人。
2,890人、約15.6%増です。
認定者全体の増加率は約9%。
それに対して、要介護3~5は約15.6%増。
つまり泉州では、
介護需要の「量」も増える。
そして「重さ」は、それ以上に増える。
という変化が起きます。
要支援1はほぼ横ばい。重度側へ需要が移る
さらに特徴的なのは、要支援1です。
2026年度9,941人に対し、2040年度は9,884人。
ほぼ横ばいです。
一方で、
要介護3は約14.2%増。
要介護4は約16.5%増。
要介護5は約16.5%増。
介護需要全体が均等に増えるわけではありません。
より多くの支援を必要とする側へ、需要の重心が移っていく。
泉州では、その変化が数字にはっきり出ています。
「5,000人増える」だけでは説明できない
要支援・要介護認定者が約5,100人増える。
それだけでも大きな変化です。
しかし、介護現場で必要になるのは単純な人数ではありません。
要介護度が高くなれば、
身体介護。
移乗。
排泄。
食事。
認知症への対応。
医療との連携。
夜間対応。
看取り。
など、必要になる支援も複雑になっていきます。
だから泉州の介護需要は、
「何人増えるのか」だけではなく、「どのような介護を必要とする人が増えるのか」
まで見なければなりません。
支える側は、むしろ厳しくなる
大阪府全体では、2040年に向けて85歳以上人口や認知症高齢者が増える一方、生産年齢人口は減少すると見込まれています。
大阪府自身も、介護人材確保の持続可能性を重要な課題として位置付けています。
介護需要は増える。
重度者も増える。
しかし、
支える働き手の母数は減っていく。
泉州でも、この構造から逃れることはできません。
泉州では「距離」も介護人材不足になる
泉州は8市4町からなる広い圏域です。
この地域で人材を考えるとき、
「泉州全体で介護職が何人いるか」
だけでは不十分です。
働く人にとっては、
自宅から何分で通えるか。
公共交通で通えるか。
車が必要か。
短時間勤務でも移動の負担に見合うか。
という条件が重要です。
泉州全体には働ける人がいても、
その人が働ける場所と、人を必要としている施設が一致しなければ、現場には届きません。
つまり泉州では、
人数不足と同時に、「地理的な接続不足」も起こりやすい。
と考えられます。
地域内で人材を採り合うだけでは増えない
人材不足になると、
採用広告を増やす。
紹介会社を利用する。
給与や待遇を改善する。
外国人材を受け入れる。
さまざまな方法があります。
どれも必要です。
ただし、泉州のある施設が、同じ泉州の別の施設から介護職を一人採用しても、泉州全体の介護力は増えません。
介護需要が約9%増え、重度層は約16%増える地域では、
現在働いている人をどの施設が採るかだけでは足りない。
地域全体で、介護に関われる人そのものを増やす必要があります。
「週5日働ける人」だけが働き手ではない
そこで見落としたくないのが、地域にある「働く力」です。
一度介護現場を離れた人。
子育て中の人。
家族の介護をしている人。
週に数日なら働ける人。
短時間なら働ける人。
副業で介護に関われる人。
生活環境に合わせて働き方を変えたい人。
こうした人も、地域を支える可能性を持っています。
働く世代そのものが減っていくなら、
「一人をフルタイムで確保する」だけではなく、「複数の人の働ける時間を地域で生かす」
という考え方も必要になります。
「働ける」と「現場へ戻れる」の間には距離がある
ただし、働ける時間があるだけでは現場には戻れません。
ブランクが不安。
知らない職場は怖い。
人間関係が分からない。
今の介護現場で自分が働けるか不安。
いきなり長期勤務を決めるのは難しい。
私たちは、こうした状態を**「戻れない構造」**と考えています。
介護施設には求人がある。
地域には働ける人もいる。
でも、つながらない。
泉州ではそこに、さらに「距離」という条件も加わります。
介護人材不足には、
人数不足だけでなく、心理的・地理的な「接続不足」もある。
ということです。
スポット勤務を、地域との接点にする
そこで、スポット勤務には別の可能性があります。
急な欠員を埋めるだけではありません。
一度、短い時間だけ働いてみる。
自宅から通えるか確認する。
仕事内容を見る。
職場の雰囲気を知る。
一緒に働く人を知る。
施設側も、
その人の働き方や人柄を見る。
そこで、
「また働けそう。」
「また来てもらいたい。」
という関係が生まれる。
その一度を、一度きりで終わらせない。
スポット勤務を、
地域の人と介護現場がつながる入口
として使う考え方です。
泉州で必要になる「人材循環」
泉州では、
介護需要が増える。
重度者はそれ以上に増える。
働き手は減っていく。
そして、需要と人材は広い地域に分散しています。
だからこそ必要なのは、
今いる人が働き続けられること。
一度離れた人が戻れること。
短時間から現場に入れること。
生活に合わせて働き方を変えられること。
自宅から通える現場とつながること。
一度つながった施設と関係を続けること。
私たちは、こうした状態を**「人材循環」**という視点から考えています。
人材循環とは、
限られた人材を施設同士で奪い合うのではなく、
地域に存在する働く力が現場へ入り、戻り、働き方を変えながら地域を支え続けられる状態をつくること。
泉州では、
「誰がいるか」だけではなく、「その人がどこで、どう働けるのか」までつなぐこと
が重要になります。
KANTAN!が考えること
KANTAN!は、2026年9月勤務分から介護職求人の掲載を開始します。
私たちが目指しているのは、スポット勤務を増やすことだけではありません。
まず、一度働いてみる。
働く人が現場を知る。
現場も働く人を知る。
そして、一度きりで終わらせず、その先の働き方につなげる。
そのために私たちが考えているのが**「ナラシワーク™」**です。
ナラシワーク™とは、入職や継続勤務を判断する前に、実際の現場で一緒に働きながら、お互いの相性や働き方を確認する仕組みです。
スポット勤務。
ナラシワーク。
採用。
定着。
それぞれを別々のものではなく、一つの流れとしてつなげていく。
KANTAN!は、看護・介護のスポット勤務とナラシワーク™を通じて、地域の医療・介護人材が働き、戻り、働き方を変えながら循環できる入口をつくることを目指しています。
まとめ
泉州高齢者福祉圏域では、要支援・要介護認定者が、
2026年度 57,087人
2040年度 62,205人
へ増えると推計されています。
14年間で5,118人、約9.0%増です。
さらに要介護3~5は、
2026年度 18,492人
2040年度 21,382人
へ増加。
約15.6%増です。
つまり泉州では、
介護需要そのものが増える。
そして、
より重い介護を必要とする人は、それ以上のペースで増える。
その一方で、支える働き手の母数は減っていきます。
さらに8市4町に広がる地域では、人がいる場所と、人を必要としている場所をどうつなぐかという課題もあります。
だから泉州の介護人材不足は、
単純な**「人数不足」**だけではありません。
需要増。
重度化。
働き手減少。
そして、地域の中の接続。
複数の問題が重なっています。
#001から#008まで見てきて、改めて分かることがあります。
大阪府には、
一つの「介護人材不足」ではなく、地域ごとに異なる「複数の介護人材不足」がある。
泉州では、
「増える需要を、広い地域で、減っていく働き手とどう支えるのか」
そこに向き合う必要があります。
そして8圏域すべてを見ると、
介護人材不足を「あと何人採用すればよいか」だけで考える時代から、
地域にある働く力をどうつなぎ、どう循環させるかを考える時代へ。
介護人材確保そのものの考え方を変えていく必要があるのだと思います。
【出典】
・大阪府「大阪府高齢者計画2024」
・大阪府「大阪府高齢者計画2024 第5章 介護サービス量の見込み及び必要入所(利用)定員総数」
・大阪府「大阪府高齢者計画2024(高齢者福祉圏域)」