KANTAN介護人材レポート #001
大阪市高齢者福祉圏域の介護人材不足は「不足」なのか?
介護需要が集中する都市で、なぜ人材確保は難しいのか
この記事で書いていること
この記事では、
・大阪市高齢者福祉圏域とはどのような地域なのか
・大阪市の要支援・要介護認定者が今後どのように変化するのか
・85歳以上人口や重度の要介護認定者が増えることで、介護需要がどう変わるのか
・都市部で介護人材を確保する難しさはどこにあるのか
・介護人材不足を「人数不足」だけでなく「接続」と「人材循環」から捉える視点
について整理しています。
本記事は、大阪府の介護人材不足を8つの高齢者福祉圏域から考える「KANTAN介護人材レポート」の第1回です。
大阪市高齢者福祉圏域とは
大阪府では、介護サービスの提供体制などを考える地域単位として、府内を8つの「高齢者福祉圏域」に分けています。
大阪市、豊能、三島、北河内、中河内、南河内、堺市、泉州の8圏域です。
大阪市高齢者福祉圏域は、大阪市1市で構成されています。
この8圏域は、大阪府の二次医療圏や医療介護総合確保区域とも一致しています。
つまり大阪では、医療と介護を同じ地域単位から見ることができます。
大阪市は、その中でも最も人口規模が大きく、介護需要の絶対数も大きい都市型の圏域です。
大阪市には、約19.5万人の要支援・要介護認定者がいる
大阪府の「大阪府高齢者計画2024」によると、大阪市の要支援・要介護認定者数は、
2024年度 190,235人
2025年度 193,241人
2026年度 195,168人
2040年度 209,946人
と推計されています。
2026年度から2040年度までに、約1万4,800人増える計算です。
大阪市だけで約21万人。
大阪府全体の2040年度推計が641,481人なので、かなり大きな割合を大阪市が占めることになります。
介護人材不足を考えるとき、まず押さえておきたいのは、この「需要の大きさ」です。
大阪市では、これからも非常に大きな介護需要を支え続ける必要があります。
2040年に向けて増えるのは「人数」だけではない
ただし、注目すべきなのは認定者数の合計だけではありません。
要介護度別に見ると、大阪市では2026年度から2040年度にかけて、
要支援1 30,344人 → 29,316人
要介護1 37,187人 → 40,154人
要介護3 25,485人 → 28,387人
要介護4 31,569人 → 36,157人
要介護5 21,363人 → 24,171人
と推計されています。
軽度の要支援1は減少する一方で、要介護3、4、5といった、より多くの支援を必要とする層は増えていきます。
つまり大阪市では、
介護を必要とする人が増えるだけでなく、介護ニーズそのものが重くなる可能性があります。
これは、単純に「利用者が何人増えるか」だけでは見えない変化です。
85歳以上人口の増加が、介護需要をさらに変える
大阪市の「高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」では、2040年に向けて85歳以上人口が大きく増えるとされています。
大阪市の65歳以上人口は、2025年の約70.1万人から2040年には約73.9万人へ増え、高齢化率も25.5%から30.5%へ上昇する見込みです。
さらに大阪市は、85歳以上人口の急速な増加によって、要介護認定率の上昇や認知症高齢者の増加、医療・介護双方のサービス需要の増加・多様化を見込んでいます。
ここで重要なのは、
介護需要が増えるだけではなく、必要になる支援の内容も複雑になる
ということです。
身体介護。
認知症ケア。
医療との連携。
在宅生活の支援。
看取り。
介護人材に求められる役割は、これまで以上に広がっていく可能性があります。
一方で、支える側は減っていく
大阪市自身も、2040年に向けた大きな課題として、生産年齢人口の減少による担い手不足を挙げています。
ここに、大阪市の介護人材不足の難しさがあります。
介護需要は大きい。
要介護認定者も増える。
より重い支援を必要とする人も増える。
その一方で、介護を支える現役世代は減っていく。
大阪市は人口の多い大都市です。
だから、人材も豊富にいるように見えるかもしれません。
しかし、都市部だから介護人材を確保しやすいとは限りません。
都市部だから、人材を確保しやすいとは限らない
大阪市では、働く場所の選択肢が非常に多くあります。
介護施設。
訪問介護。
病院。
訪問看護。
障害福祉。
一般企業。
同じ資格や経験を持つ人でも、働く先は一つではありません。
さらに介護施設同士でも、人材を必要としています。
つまり大阪市の介護人材不足は、
「そもそも地域に働く人がいない」という不足だけではなく、限られた働き手を多くの事業者が求める「採用競争」として表れやすい
と考えられます。
需要が集中する。
事業所も集中する。
働く選択肢も多い。
だからこそ、採用する側には「どう選ばれるか」という課題が生まれます。
「何人採用するか」だけでは解決できない
人材不足への対応というと、
求人を増やす。
採用広告を出す。
紹介会社を使う。
給与を上げる。
といった方法がまず考えられます。
もちろん、こうした取り組みは必要です。
しかし、生産年齢人口そのものが減っていく中では、施設同士が今いる人材を採り合うだけでは限界があります。
ある施設が一人採用できても、その人が別の介護施設から移ってきただけであれば、大阪市全体で介護を支える人数が増えたわけではありません。
だからこそ、採用とは別の視点も必要になります。
「働ける人」と現場の間にある距離
介護の仕事を離れた人。
常勤では難しい人。
短時間なら働ける人。
子育てや介護と両立しながら働きたい人。
副業として介護に関わることのできる人。
そうした人たちが、地域の中には存在します。
しかし、
いきなり常勤で復職するのは不安。
職場の雰囲気が分からない。
人間関係が分からない。
自分がまだ介護現場で働けるか分からない。
そんな不安があれば、求人があっても応募にはつながりません。
これは、私たちが看護師不足について考えてきた「戻れない構造」とよく似ています。
人がいないのではなく、
働ける可能性のある人と現場が、うまくつながっていない。
介護人材不足にも、こうした「接続不足」の側面があるのではないでしょうか。
スポット勤務を「穴埋め」だけで終わらせない
スポット勤務は、急な欠員を埋めるための手段として語られることが多くあります。
もちろん、その役割も重要です。
ただ、私たちはスポット勤務にはもう一つの可能性があると考えています。
短い時間でも、一度現場に入ってみる。
働く人は、職場の雰囲気や仕事内容を知ることができる。
施設側も、その人の働き方や人柄を知ることができる。
そこで、
「また来たい。」
「また来てほしい。」
という関係が生まれる。
スポット勤務を、一度きりの勤務ではなく、現場と人がつながる入口として考えるということです。
大阪市で必要なのは「人材循環」という視点
人口減少が進む中で、これから必要になるのは、新しい人を採用し続けることだけではありません。
今いる人が働き続けられること。
一度離れた人が戻れること。
常勤だけではなく、短時間や非常勤など、その人に合った形で働けること。
そして、一度つながった人と現場が、その後も関係を続けられること。
私たちは、この状態を**「人材循環」**という視点から考えています。
人材循環とは、限られた人材を施設同士で奪い合うのではなく、
地域に存在する働く力が現場へ入り、戻り、働き方を変えながら地域を支え続けられる状態をつくること
です。
大阪市のように介護需要も働く場所も集中する都市だからこそ、この考え方には意味があると考えています。
KANTAN!が考えること
KANTAN!は、2026年9月勤務分から介護職求人の掲載を開始します。
私たちが目指しているのは、スポット勤務を増やすことだけではありません。
スポット勤務を、働く人と現場がお互いを知る入口にする。
そして、一度きりで終わらせず、その先につなげていく。
そのために私たちが考えているのが「ナラシワーク™」です。
ナラシワーク™とは、入職や継続勤務を判断する前に、実際の現場で一緒に働きながら、お互いの相性や働き方を確認する仕組みです。
スポット勤務。
ナラシワーク。
採用。
定着。
それぞれを別々のものとして考えるのではなく、一つの流れとしてつなげていく。
KANTAN!は、看護・介護のスポット勤務とナラシワーク™を通じて、地域の医療・介護人材が働き、戻り、働き方を変えながら循環できる入口をつくることを目指しています。
まとめ
大阪市高齢者福祉圏域では、要支援・要介護認定者が2026年度の195,168人から、2040年度には209,946人へ増えると推計されています。
さらに、要介護4は31,569人から36,157人、要介護5は21,363人から24,171人へ増える見込みです。
85歳以上人口も増え、介護需要は量だけでなく内容も変化していきます。
一方で、生産年齢人口は減少します。
大阪市の介護人材不足は、
「人がいない」だけではありません。
大きな介護需要がある。
働く場所も多い。
その中で、多くの事業者が人材を必要としている。
つまり大阪市では、
大きな需要を支える人材の確保と、働ける人を現場へどうつなぎ続けるか。
この二つを同時に考える必要があります。
だからこそ、大阪市の介護人材不足を考えるとき、
「何人足りないのか」だけでは十分ではありません。
地域にある働く力を、どう介護現場とつなぎ、循環させていくのか。
そこまで含めて考えることが、これからの大阪市の介護人材確保には必要なのではないでしょうか。
【出典】
・大阪府「大阪府高齢者計画2024」
・大阪市「大阪市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(2024年度~2026年度)」
・国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」を基にした大阪市推計