KANTAN!(カンタン)

豊能高齢者福祉圏域の介護人材不足は「不足」なのか?

これから介護需要が大きく伸びる地域で、誰が支えるのか

 

この記事で書いていること

この記事では、

・豊能高齢者福祉圏域とはどのような地域なのか
・豊能圏域の要支援・要介護認定者が2040年に向けてどう変化するのか
・介護を必要とする人の「人数」だけでなく、要介護度がどう変化するのか
・同じ豊能圏域でも、市部と町部で条件が異なること
・将来の介護需要を「採用」だけで支え続けることの難しさ
・介護人材不足を「接続」と「人材循環」から考える視点

について整理しています。

本記事は、大阪府の介護人材不足を8つの高齢者福祉圏域から考える「KANTAN介護人材レポート」の第2回です。

第1回では、大阪市高齢者福祉圏域を取り上げました。

大阪市では、約20万人という非常に大きな介護需要と、多くの事業者が限られた働き手を求める「都市部の採用競争」が見えてきました。

では、大阪府北部に位置する豊能圏域ではどうなのでしょうか。

データを見ると、大阪市とは違う介護人材不足の姿が見えてきます。

 

豊能高齢者福祉圏域とは

豊能高齢者福祉圏域は、

豊中市、池田市、吹田市、箕面市、豊能町、能勢町

の4市2町で構成されています。大阪府の高齢者福祉圏域は二次医療圏と同じ区域に設定されているため、医療と介護を同じ地域単位から考えることができます。

同じ圏域の中に、豊中市や吹田市のような大阪市に隣接する都市部がある一方、豊能町、能勢町も含まれています。

つまり、「豊能」という一つの圏域の中でも、人口構造や生活圏、介護サービスへのアクセスなどの条件は一様ではありません。

このことは、豊能圏域の介護人材不足を考えるうえで重要なポイントになります。

 

2026年度約6.4万人から、2040年度約7.6万人へ

まず、介護需要の大きさを見てみます。

大阪府の「大阪府高齢者計画2024」によると、豊能圏域の要支援・要介護認定者数は、

2024年度 61,040人
2025年度 62,555人
2026年度 64,071人
2040年度 75,802人

と推計されています。

2026年度から2040年度までに、

11,731人増加。

増加率にすると、**約18.3%**です。

大阪市では同じ期間に195,168人から209,946人へ約7.6%増える推計でした。

絶対数では大阪市の方が圧倒的に大きい。

しかし、これからどれだけ介護需要が増えるのかという「伸び率」で見ると、豊能圏域は大阪市を大きく上回ります。

ここに、豊能圏域の特徴があります。

 

「今の不足」だけを見ていては分からない

介護人材不足というと、

「現在、介護職員が何人足りないのか」

という議論になりがちです。

もちろん、それも重要です。

しかし豊能圏域では、もう一つ見なければならない数字があります。

これから介護を必要とする人が約18%増える。

現在の人員体制だけを基準に考えていると、将来の介護需要とのギャップが広がる可能性があります。

つまり豊能圏域の介護人材問題は、

「今、人が足りないか」だけではなく、「これから増える需要を誰が支えるのか」

という問題でもあります。

 

増えるのは、軽度の介護需要だけではない

さらに、要介護度別に見ると変化がよりはっきりします。

2026年度から2040年度にかけて、

要支援1 11,255人 → 12,200人
要支援2 9,054人 → 10,082人
要介護1 12,575人 → 14,762人
要介護2 10,476人 → 12,667人
要介護3 8,016人 → 9,953人
要介護4 7,243人 → 9,290人
要介護5 5,452人 → 6,848人

と推計されています。

すべての要介護度で増加する見込みです。

中でも、

要介護3は約24%増、
要介護4は約28%増、
要介護5は約26%増。

より多くの介護を必要とする層の増加率は、認定者全体の約18%を上回ります。

これは重要な変化です。

豊能圏域では、単に介護サービスを利用する人数が増えるだけではありません。

より多くの介護を必要とする人も増えていく。

必要となる介護人材を考えるとき、「利用者数」だけではなく、介護需要の重さまで見なければ実態を捉えられません。

 

介護需要は増える。一方で、働く世代は減っていく

大阪府は、2040年に向けて高齢者数が増加する一方、生産年齢人口は引き続き減少すると見込んでいます。

さらに、医療と介護双方のニーズが高くなる85歳以上人口や認知症高齢者の増加も予測しており、介護人材の確保を持続可能性の重要課題として位置付けています。

ここに、豊能圏域の介護人材問題の難しさがあります。

介護を必要とする人は増える。

しかも、

より多くの介護を必要とする人も増える。

その一方で、

社会全体では働く世代が減っていく。

介護需要と働き手が、反対方向に動いていきます。

 

同じ「豊能」でも条件は同じではない

もう一つ、豊能圏域を見るうえで重要なのが地域の違いです。

豊能圏域には、

豊中市
池田市
吹田市
箕面市
豊能町
能勢町

が含まれます。

大阪市に隣接する都市部と、町部が同じ圏域を構成しています。

これは大阪市高齢者福祉圏域との大きな違いです。

大阪市圏域は大阪市1市で構成されています。

一方、豊能圏域では、6つの自治体をまたいで介護人材の問題を考える必要があります。

働く人にとっては、市町村の境界よりも、

「通勤できるか」

「自分に合った勤務時間か」

「どんな職場なのか」

「どのような働き方ができるのか」

といった条件の方が重要です。

行政上は同じ圏域でも、人材が自由に動けるとは限りません。

 

人材不足を「施設単位」だけで考えてよいのか

介護施設から見れば、人材不足への対応は当然「自施設で何人採用するか」という問題になります。

しかし地域全体で見ると、少し景色が変わります。

A施設がB施設から一人採用する。

その施設にとっては一人増えます。

しかし、地域全体の介護人材は増えていません。

生産年齢人口が減る中で、すべての施設が同じ人材を採り合えば、採用競争はさらに激しくなります。

しかも豊能圏域では、2040年度に向けて要支援・要介護認定者そのものが約18%増えると推計されています。

これからの介護人材確保では、

「誰を採用するか」だけではなく、「地域にある働く力をどう増やし、どう生かすか」

という視点が必要になります。

 

「働いていない人」だけが、新しい働き手ではない

ここでいう「働く力」は、常勤で新しく就職する人だけではありません。

一度介護現場を離れた人。

常勤では働けない人。

週に数日なら働ける人。

短時間なら働ける人。

家庭との両立を考えている人。

副業として介護に関われる人。

年齢や生活環境に合わせて、働き方を変えたい人。

こうした人たちも、地域に存在する働く力です。

人口そのものが減っていくのであれば、

一人ひとりが働ける形を増やすことも、人材確保の一つ

と考える必要があります。

 

求人があれば、人は現場に戻るのか

ただし、求人を増やすだけで人が戻るとは限りません。

ブランクがある。

知らない職場に入るのが不安。

人間関係が分からない。

仕事内容が自分に合うか分からない。

いきなり長期勤務を決めるのは怖い。

働ける可能性があっても、その一歩を踏み出せない人はいます。

私たちは看護師について、この状態を**「戻れない構造」**と表現してきました。

介護でも同じように、

人を必要としている現場がある一方で、

働ける可能性のある人が、現場につながっていない。

つまり介護人材不足には、

人数の不足だけではなく、「接続不足」という側面もある

と考えています。

 

スポット勤務を、人材循環の入口にできないか

そこで私たちが注目しているのが、スポット勤務のもう一つの役割です。

スポット勤務というと、

「今日、人が足りない」

「この時間だけ来てほしい」

という短期的な人手不足への対応として捉えられがちです。

もちろん、その役割はあります。

しかし、一度働くことには別の意味もあります。

働く人は、

職場を見ることができる。

仕事内容を知ることができる。

人間関係や雰囲気を感じることができる。

施設側も、

その人の働き方を見ることができる。

人柄を知ることができる。

そこで、

「また働きたい。」

「また来てほしい。」

という関係が生まれることがあります。

スポット勤務を一度きりの「穴埋め」で終わらせず、人と現場がつながる入口として活用する。

人口減少が進む地域では、この考え方がより重要になると考えています。

 

豊能圏域で必要になる「人材循環」

豊能圏域では、2026年度から2040年度にかけて要支援・要介護認定者が約1万1,700人増える見込みです。

これだけ需要が増える中で、

すべてを新規採用だけで支えることができるのか。

そこは考えなければなりません。

今いる人が働き続ける。

一度離れた人が戻る。

短時間から働き始める。

複数の働き方から、自分に合った形を選ぶ。

一度つながった施設と関係を続ける。

私たちは、こうした状態を**「人材循環」**という視点から考えています。

人材循環とは、限られた人材を施設同士で奪い合うのではなく、

地域に存在する働く力が現場へ入り、戻り、働き方を変えながら地域を支え続けられる状態をつくること

です。

現在の不足を埋めるだけではなく、将来の介護需要まで支える。

豊能圏域の数字を見ると、その必要性がよりはっきり見えてきます。

 

KANTAN!が考えること

KANTAN!は、2026年9月勤務分から介護職求人の掲載を開始します。

私たちが目指しているのは、スポット勤務を増やすことだけではありません。

まず一度働いてみる。

働く人が現場を知る。

現場も働く人を知る。

そして、一度きりで終わらせず、その先の働き方につなげる。

そのために私たちが考えているのが「ナラシワーク™」です。

ナラシワーク™とは、入職や継続勤務を判断する前に、実際の現場で一緒に働きながら、お互いの相性や働き方を確認する仕組みです。

スポット勤務。

ナラシワーク。

採用。

定着。

それぞれを別々のものとしてではなく、一つの流れとしてつなげていく。

KANTAN!は、看護・介護のスポット勤務とナラシワーク™を通じて、地域の医療・介護人材が働き、戻り、働き方を変えながら循環できる入口をつくることを目指しています。

 

まとめ

豊能高齢者福祉圏域では、要支援・要介護認定者が2026年度の64,071人から、2040年度には75,802人へ増えると推計されています。

14年間で11,731人、約18.3%の増加です。

さらに、

要介護3 8,016人 → 9,953人
要介護4 7,243人 → 9,290人
要介護5 5,452人 → 6,848人

と、より多くの介護を必要とする層も大きく増える見込みです。

一方で、大阪府全体では生産年齢人口の減少が続くと見込まれています。

つまり豊能圏域の介護人材不足は、

「今、人が足りない」という問題だけではありません。

これから介護需要が大きく増えていく地域で、

その需要を誰が、どのような働き方で支えるのか。

という将来の問題でもあります。

#001で取り上げた大阪市では、大きな介護需要と都市部の採用競争が見えてきました。

豊能圏域では、これから大きく伸びる介護需要と、それを支える働き手をどう確保するかという別の課題が見えてきます。

同じ大阪府でも、介護人材不足の意味は同じではありません。

だからこそ、

「一つの介護人材不足」ではなく、「複数の介護人材不足」がある。

地域ごとの違いを見ながら、採用だけでなく、人が地域の中で働き、戻り、つながり続けられる仕組みまで考える必要があります。

豊能圏域では、

「今の不足をどう埋めるか」から、「これから増える需要をどう支えるか」へ。

介護人材確保の視点を、一段先へ進める必要がありそうです。


【出典】

・大阪府「大阪府高齢者計画2024」 
・大阪府「高齢者福祉圏域図」

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