KANTAN介護人材レポート #004
北河内高齢者福祉圏域の介護人材不足は「不足」なのか?
約7万人の介護需要を抱える大規模生活圏で、人材をどう支え続けるのか
この記事で書いていること
この記事では、
・北河内高齢者福祉圏域とはどのような地域なのか
・北河内圏域の要支援・要介護認定者が2040年に向けてどう変化するのか
・介護需要の「伸び率」だけでは見えない、大きな需要規模
・7市にまたがる大規模生活圏で介護人材を確保する難しさ
・介護サービスを必要とする人が増える一方、働き手が減っていく構造
・介護人材不足を「採用人数」だけでなく「人材循環」から考える視点
について整理しています。
本記事は、大阪府の介護人材不足を8つの高齢者福祉圏域から考える「KANTAN介護人材レポート」の第4回です。
#001の大阪市では「大きな介護需要と都市部の採用競争」。
#002の豊能では「これから大きく伸びる介護需要」。
#003の三島では「介護需要の量と重さの増加」。
では、北河内では何が起きているのでしょうか。
データを見ると、これまでの3地域とは少し違う姿が見えてきます。
北河内の特徴は、将来の伸び率だけではありません。
すでに約7万人という大きな介護需要を抱えていること。
その大きな需要を、これからも地域で支え続けなければならないという課題です。
北河内高齢者福祉圏域とは
北河内高齢者福祉圏域は、
枚方市、寝屋川市、守口市、門真市、大東市、四條畷市、交野市
の7市で構成されています。大阪府では高齢者福祉圏域と二次医療圏が同じ区域に設定されており、医療と介護を同じ地域単位から考えることができます。
大阪市の東から北東に広がる、大きな生活圏です。
枚方市のような人口規模の大きい都市もあれば、守口市、門真市、寝屋川市、大東市、四條畷市、交野市と、それぞれ異なる人口構造や生活圏を持つ自治体が含まれています。
つまり北河内では、一つの施設、一つの自治体だけでなく、7市をまたぐ人の移動まで含めて介護人材を考える必要があります。
すでに約7万人が要介護認定を受けている
大阪府の最新資料によると、北河内の要介護認定者数は、
2024年度 68,492人
2025年度 69,629人
2026年度 71,078人
2040年度 74,568人
と推計されています。
2026年度から2040年度まででは、
3,490人増加。
増加率は約4.9%です。
これだけを見ると、
「豊能や三島ほど増えないのであれば、北河内の課題はそれほど大きくないのではないか」
と思うかもしれません。
しかし、ここで見るべきなのは増加率だけではありません。
2026年度の時点ですでに7万1,078人。
2040年度には7万4,568人。
つまり北河内では、
これから介護需要が急増するというより、すでに非常に大きな介護需要を抱えている状態が続く
と見ることができます。
「伸び率が小さい=問題が小さい」ではない
これは介護人材不足を考えるうえで、とても重要な点です。
将来推計を見るとき、どうしても「何%増えるのか」に目が向きます。
しかし、
10万人の需要が5%増える地域と、
2万人の需要が20%増える地域では、
現場に必要となる人員やサービスの規模は違います。
北河内は、大阪市に次ぐ大きな生活圏の一つです。
介護需要の伸び率だけを見るのではなく、
すでに存在する大きな需要を、今後も安定して支え続けられるのか。
そこが北河内の介護人材問題の中心になります。
介護サービスの利用量も高水準が続く
大阪府高齢者計画2024では、各圏域の介護サービス量についても将来見込みが示されています。
例えば特定福祉用具販売の介護サービスでは、北河内は、
2024年度 124,113千円
2025年度 130,394千円
2026年度 138,741千円
2040年度 148,361千円
と見込まれています。
個別サービスの一例ではありますが、北河内で今後も大きな介護需要が続くことを示す材料の一つです。
重要なのは、
「介護を必要とする人が大きく増えるかどうか」だけではなく、「大きな介護需要そのものが長期間続く」
ということです。
7市をまたぐ地域だからこその難しさ
北河内は7市で構成されています。
行政上は同じ高齢者福祉圏域ですが、実際に働く人にとって重要なのは行政区分ではありません。
通勤時間。
電車やバスで通えるか。
自宅からどれくらい近いか。
勤務時間は生活に合うか。
施設の雰囲気はどうか。
仕事内容は自分に合っているか。
こうした現実的な条件です。
例えば、同じ北河内圏域にある施設でも、枚方市と門真市では働く人の生活圏が異なる場合があります。
だから、
「北河内に介護人材がいる」ことと、「必要な施設に人材が届く」ことは同じではありません。
地域の中に働ける人が存在していても、その人と施設が適切につながらなければ、人材不足は解消されません。
大規模な医療提供体制を持つ地域でもある
北河内は、介護だけでなく医療需要も大きい地域です。
大阪府の病床機能報告では、北河内の2025年7月時点の予定病床は、
高度急性期 1,612床
急性期 4,357床
回復期 1,721床
慢性期 2,401床
など、府内でも大きな医療供給規模を持っています。
介護人材の記事で、なぜ医療の数字を見るのでしょうか。
高齢者の生活は、介護だけでは完結しないからです。
入院する。
退院する。
リハビリを受ける。
自宅へ戻る。
訪問看護や訪問介護を利用する。
施設へ入る。
高齢になるほど、医療と介護を行き来する場面が増えていきます。
北河内のような大規模生活圏では、
医療需要と介護需要を別々に考えるだけでは、地域の人材問題を捉えきれません。
大阪府全体では、支える側が減っていく
大阪府は2040年に向けて、高齢者数が増加し、特に医療・介護双方のニーズが高まる85歳以上人口や認知症高齢者が増える一方、生産年齢人口は減少すると見込んでいます。
つまり、
介護需要は続く。
支援の必要性も高まる。
その一方で、
支える側となる働く世代は減っていく。
北河内では要介護認定者の伸び率そのものは豊能や三島ほど高くありません。
しかし、すでに7万人を超える介護需要があります。
だからこそ、
「これから何人増えるのか」だけではなく、「今ある大きな需要を誰が支え続けるのか」
という視点が必要になります。
大きな地域ほど「採り合い」だけでは難しい
人材不足になると、
求人を出す。
採用広告を増やす。
人材紹介を利用する。
待遇を改善する。
といった方法が考えられます。
もちろん、どれも必要です。
しかし、地域全体で見れば問題があります。
北河内のA施設が、同じ北河内のB施設から一人採用する。
A施設にとっては人が増えます。
しかし、北河内全体で介護を支える人数は増えていません。
7万人を超える介護需要を長期的に支えるには、
今いる介護人材をどの施設が採るのかだけではなく、地域全体で「働ける人」をどう増やすか
まで考える必要があります。
地域には、まだ活用できる「働く力」がある
介護を支える働き手は、常勤職員だけではありません。
一度介護現場を離れた人。
週に数日なら働ける人。
短時間なら働ける人。
子育てや家族の介護と両立したい人。
副業として働ける人。
年齢や生活環境に合わせて働き方を変えたい人。
こうした人も、地域に存在する働く力です。
生産年齢人口が減る中で、
「常勤で働ける人だけ」
を対象に採用を続けていけば、人材確保はさらに難しくなります。
だからこそ、
一人ひとりが働ける時間や条件に合わせて、介護現場とつながる方法を増やすこと
が必要になります。
しかし、働ける人がそのまま現場に戻るとは限らない
働く時間がある。
介護経験もある。
それでも、現場に戻れないことがあります。
ブランクがある。
知らない職場が不安。
人間関係が分からない。
今の自分に介護の仕事ができるのか不安。
いきなり長期勤務を決めるのは怖い。
私たちは、看護師についてこうした状態を**「戻れない構造」**と考えてきました。
介護でも同じことが起こり得ます。
人を必要としている施設がある。
働ける可能性のある人もいる。
でも、その間にある不安や条件によって両者がつながらない。
これは単純な「人数不足」ではありません。
「接続不足」です。
北河内では「地域内の接続」がより重要になる
北河内には7つの市があります。
そこに多くの介護施設があり、多くの働く人が暮らしています。
だからこそ、
「北河内に何人介護職がいるか」
だけではなく、
その人たちが必要な現場とつながることができているか
を見る必要があります。
一つの施設に固定して考えるのではなく、
生活圏の中で働く。
短い時間から働く。
一度現場を離れても、また戻る。
働き方を変えながら介護に関わり続ける。
人口減少時代の人材確保では、こうした柔軟な接続の方が重要になっていく可能性があります。
スポット勤務を、地域とつながる入口にする
スポット勤務は、急な人手不足を補う仕組みとして広がっています。
しかし、私たちはそれだけではないと考えています。
一度、短い時間から働いてみる。
働く人は、
職場を見る。
仕事を見る。
一緒に働く人を見る。
施設側も、
その人の働き方を見る。
人柄を知る。
そこで、
「また働きたい。」
「また来てほしい。」
という関係が生まれる。
大切なのは、その一度の勤務を一度きりで終わらせないことです。
スポット勤務を、人と現場がつながる入口にする。
北河内のように人口規模も需要規模も大きい地域では、この入口を増やすことに意味があると考えています。
北河内で考えたい「人材循環」
北河内では、2040年度にも約7万4,600人の要介護認定者が見込まれています。
つまり、
今の不足を埋めれば終わる話ではありません。
大きな介護需要を、これからも継続して支える仕組みが必要です。
今いる人が働き続ける。
一度離れた人が戻る。
短時間から現場に入る。
働き方を変えながら介護に関わる。
一度つながった施設と関係を続ける。
私たちは、こうした状態を**「人材循環」**という視点から考えています。
人材循環とは、限られた人材を施設同士で奪い合うのではなく、
地域に存在する働く力が現場へ入り、戻り、働き方を変えながら地域を支え続けられる状態をつくること
です。
北河内のような大規模生活圏だからこそ、
人材を「どこが採るか」だけではなく、
人材が地域の中でどうつながり続けるか
を考える必要があります。
KANTAN!が考えること
KANTAN!は、2026年9月勤務分から介護職求人の掲載を開始します。
私たちが目指しているのは、スポット勤務を増やすことだけではありません。
まず一度働いてみる。
働く人が現場を知る。
現場も働く人を知る。
そして、一度きりで終わらせず、その先につなげる。
そのために私たちが考えているのが**「ナラシワーク™」**です。
ナラシワーク™とは、入職や継続勤務を判断する前に、実際の現場で一緒に働きながら、お互いの相性や働き方を確認する仕組みです。
スポット勤務。
ナラシワーク。
採用。
定着。
それぞれを別々のものとしてではなく、一つの流れとしてつなげる。
KANTAN!は、看護・介護のスポット勤務とナラシワーク™を通じて、地域の医療・介護人材が働き、戻り、働き方を変えながら循環できる入口をつくることを目指しています。
まとめ
北河内高齢者福祉圏域では、要介護認定者が、
2024年度 68,492人
2026年度 71,078人
2040年度 74,568人
へ増えると推計されています。
2026年度から2040年度までの増加率は約4.9%。
豊能や三島と比較すると、大きな伸びには見えません。
しかし、北河内で見るべきなのは「伸び率」だけではありません。
すでに7万人を超える大きな介護需要が存在し、それを2040年まで支え続ける必要がある。
ここに北河内の特徴があります。
#001大阪市では「巨大な需要と都市部の採用競争」。
#002豊能では「これから大きく伸びる介護需要」。
#003三島では「増える需要と重くなる介護需要」。
そして#004北河内では、
「すでに存在する大きな介護需要を、どう支え続けるか」。
という別の課題が見えてきます。
同じ大阪府でも、介護人材不足の姿は同じではありません。
だから、
一つの「介護人材不足」ではなく、地域ごとに異なる「複数の介護人材不足」がある。
北河内では、
「これからどれだけ増えるか」だけでなく、「今ある大きな需要をどう持続可能に支えるか」
そこから介護人材確保を考える必要がありそうです。
【出典】
・大阪府「大阪府高齢者計画2024」
・大阪府「令和7年度『地域医療構想』の進捗と医療体制の状況(北河内二次医療圏)」
・大阪府「令和5年度 病床機能報告」