KANTAN介護人材レポート #005
中河内高齢者福祉圏域の介護人材不足は「不足」なのか?
介護需要はほぼ横ばい。それでも人材確保が楽にならない理由
この記事で書いていること
この記事では、
・中河内高齢者福祉圏域とはどのような地域なのか
・要支援・要介護認定者数が2040年に向けてどう変化するのか
・認定者総数は約2.6%増にとどまる一方、要介護3~5は増えること
・「人数が増えない=介護人材不足が改善する」とは限らない理由
・より重い介護を支える人材をどう確保するのか
・介護人材不足を「戻れない構造」「接続不足」「人材循環」から考える視点
について整理しています。
本記事は、大阪府の介護人材不足を8つの高齢者福祉圏域から考える「KANTAN介護人材レポート」の第5回です。
#001の大阪市では「巨大な需要と都市部の採用競争」。
#002の豊能では「これから大きく伸びる介護需要」。
#003の三島では「増える需要と重くなる介護需要」。
#004の北河内では「すでに存在する大きな介護需要をどう支え続けるか」。
そして今回の中河内は、少し様子が違います。
2040年になっても、要支援・要介護認定者の総数はそれほど増えません。
しかし、その中身を見ると、
「人数が増えないから、人材問題も大きくならない」とは言えない地域
であることが見えてきます。
中河内高齢者福祉圏域とは
中河内高齢者福祉圏域は、
東大阪市、八尾市、柏原市
の3市で構成されています。大阪府の高齢者福祉圏域図でも、この3市が中河内圏域として位置付けられています。
大阪市の東側に位置し、東大阪市を中心に大きな人口を抱える都市圏です。
また、中河内は介護だけで完結する地域ではありません。
2025年7月時点の予定病床数を見ると、高度急性期698床、急性期2,680床、回復期1,115床、慢性期1,081床があり、医療と介護を行き来しながら地域生活を支える必要があります。
では、この地域の介護需要は今後どう変わるのでしょうか。
2026年度約5.9万人から、2040年度約6.1万人へ
大阪府の「大阪府高齢者計画2024」によると、中河内圏域の要支援・要介護認定者数は、
2024年度 57,476人
2025年度 58,587人
2026年度 59,379人
2040年度 60,942人
と推計されています。
2026年度から2040年度までの増加は、
1,563人。
増加率は、**約2.6%**です。
三島圏域では同じ期間に約20%増。
北河内でも約4.9%増でした。
それらと比較すると、中河内の介護需要はかなり安定しているように見えます。
では、中河内では介護人材不足をそれほど心配しなくてもいいのでしょうか。
数字をもう一段掘ると、違う景色が見えてきます。
要支援は減る。それでも要介護3~5は増える
要介護度別に2026年度と2040年度を比較すると、
要支援1 10,824人 → 10,013人
要支援2 7,791人 → 7,536人
要介護1 11,758人 → 11,920人
要介護2 9,724人 → 10,211人
要介護3 7,117人 → 7,714人
要介護4 6,845人 → 7,572人
要介護5 5,320人 → 5,976人
と推計されています。
ここに、中河内の特徴があります。
要支援1は約7.5%減。
要支援2も約3.3%減。
一方で、
要介護3は約8.4%増。
要介護4は約10.6%増。
要介護5は約12.3%増。
要介護3~5を合計すると、
2026年度 19,282人 → 2040年度 21,262人。
約1,980人、約10.3%増加します。
認定者総数では約2.6%増。
しかし、要介護3~5だけを見ると約10.3%増。
つまり中河内では、
介護を必要とする「人数」はほとんど変わらなくても、より多くの支援を必要とする人の割合が高まっていく
可能性があります。
「6万人を支える」は同じでも、必要な介護は同じではない
ここが介護人材不足を考えるうえで重要です。
例えば、
2026年も約6万人。
2040年も約6万人。
数字だけを見れば、
「介護需要はほとんど変わらない」
ように見えます。
しかし、その6万人の状態が同じとは限りません。
要介護度が高くなれば、
身体介護。
移乗。
排泄。
食事。
認知症への対応。
医療職との連携。
在宅生活を継続するための支援。
など、現場に求められるケアも変わってきます。
だから介護需要を見るとき、
「何人いるか」だけでは十分ではありません。
「どの程度の支援を必要とする人が、どれだけいるのか」
まで見る必要があります。
人数が横ばいでも、人材確保が楽になるとは限らない
中河内の要支援・要介護認定者数は、2040年度に向けて大幅には増えません。
それでも、
「介護人材も今と同じ人数でいい」
とは単純には言えません。
より重い介護を必要とする人が増えれば、現場にはそれを支える人が必要になります。
そしてもう一つ重要なのが、支える側の問題です。
大阪府は「大阪府高齢者計画2024」で、地域包括ケアシステムの深化・推進を掲げ、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられる社会を目指しています。
地域で暮らし続ける人が増えるほど、その生活を支える介護人材の存在は欠かせません。
つまり中河内では、
介護需要の総量が爆発的に増えることへの対応というより、変化する介護需要をどう持続的に支えるか
が課題になっていきます。
「採用人数」だけでは見えない問題
人材不足になると、
求人を増やす。
採用広告を出す。
人材紹介を利用する。
待遇を改善する。
外国人材を活用する。
といった方法が考えられます。
どれも重要です。
しかし、地域全体で見ると別の問題があります。
東大阪市のある施設が、八尾市の施設で働いていた介護職を採用したとします。
その施設では一人増えます。
しかし、中河内全体で介護を支える人は増えていません。
限られた人材を施設同士で採り合うだけでは、
地域全体の介護力そのものは増えない。
要介護3~5が約10%増えていく中河内では、ここを考える必要があります。
必要なのは「新しく採る人」だけなのか
地域には、現在フルタイムで介護職として働いている人以外にも、働く可能性のある人がいます。
一度介護現場を離れた人。
子育てなどでフルタイム勤務が難しい人。
週に数日なら働ける人。
短時間なら働ける人。
副業として介護に関われる人。
生活環境に合わせて働き方を変えたい人。
こうした人たちも、地域に存在する**「働く力」**です。
これから重要になるのは、
常勤で働ける人だけを探すことではなく、
今まで十分に現場とつながっていなかった働く力を、どう介護現場につなぐか。
という視点ではないでしょうか。
「働ける」と「戻れる」は同じではない
しかし、働ける可能性があるからといって、すぐに介護現場へ戻れるとは限りません。
ブランクがある。
今の介護現場についていけるか不安。
知らない職場の人間関係が怖い。
求人票だけでは職場の雰囲気が分からない。
いきなり長期勤務を決めるのは難しい。
私たちは看護師について、こうした状態を**「戻れない構造」**と表現してきました。
介護でも同じことが起こり得ます。
施設側には求人がある。
地域には働ける可能性のある人がいる。
それでも両者がつながらない。
この状態を「人がいない」だけで説明してしまうと、本当の課題を見落とします。
人材不足の中には、
「人数不足」だけではなく、「接続不足」もある。
私たちはそう考えています。
重くなる介護需要だからこそ「一度働く」に意味がある
特に介護の仕事では、
求人票や面接だけで分からないことがあります。
実際の利用者像。
介護度。
職員同士の連携。
業務の進め方。
施設の雰囲気。
自分の経験がどこまで生かせるのか。
こうしたことは、実際の現場に入ることで初めて見える場合があります。
だからスポット勤務には、
単にその日の人手不足を補うだけではなく、
働く人と現場が、お互いを知る入口
という役割もあると私たちは考えています。
一度働いてみる。
「ここなら働けるかもしれない。」
施設側も、
「また来てもらいたい。」
と思う。
そこから次の勤務につながる。
一度きりの勤務を、一度きりで終わらせない。
それも、介護人材を地域につなぎ直す一つの方法です。
中河内で考えたい「人材循環」
中河内では、2026年度から2040年度に要支援・要介護認定者全体は約2.6%しか増えません。
しかし、要介護3~5は約10.3%増えます。
この数字から見えてくるのは、
「もっと大量に採用する」という話だけではありません。
今いる人が働き続けられる。
一度離れた人が戻れる。
短時間から介護に関われる。
生活に合わせて働き方を変えられる。
一度つながった人と施設が関係を続けられる。
私たちは、こうした状態を**「人材循環」**という視点から考えています。
人材循環とは、
限られた介護人材を施設同士で奪い合うのではなく、
地域に存在する働く力が現場へ入り、戻り、働き方を変えながら地域を支え続けられる状態をつくること。
介護需要の総数がほぼ横ばいだからこそ、
中河内ではこの考え方がより重要になるのかもしれません。
KANTAN!が考えること
KANTAN!は、2026年9月勤務分から介護職求人の掲載を開始します。
私たちが目指しているのは、スポット勤務を増やすことだけではありません。
まず、一度働いてみる。
働く人が現場を知る。
現場も働く人を知る。
そして、一度きりで終わらせず、その先の働き方につなげる。
そのために私たちが考えているのが**「ナラシワーク™」**です。
ナラシワーク™とは、入職や継続勤務を判断する前に、実際の現場で一緒に働きながら、お互いの相性や働き方を確認する仕組みです。
スポット勤務。
ナラシワーク。
採用。
定着。
それぞれを別々のものではなく、一つの流れとしてつなげていく。
KANTAN!は、看護・介護のスポット勤務とナラシワーク™を通じて、地域の医療・介護人材が働き、戻り、働き方を変えながら循環できる入口をつくることを目指しています。
まとめ
中河内高齢者福祉圏域では、要支援・要介護認定者数が、
2026年度 59,379人
2040年度 60,942人
になると推計されています。
増加は1,563人、**約2.6%**です。
しかし、その中身を見ると、
要介護3 7,117人 → 7,714人
要介護4 6,845人 → 7,572人
要介護5 5,320人 → 5,976人
となり、要介護3~5の合計は19,282人から21,262人へ約10.3%増加します。
つまり中河内で起きるのは、
単純な**「介護需要の増加」**ではありません。
介護需要の構成そのものが変わっていく。
ここに中河内の特徴があります。
#001大阪市では「巨大な需要と都市部の採用競争」
#002豊能では「これから大きく伸びる介護需要」
#003三島では「増える需要と重くなる介護需要」
#004北河内では「すでに存在する大きな介護需要をどう支え続けるか」
そして#005中河内では、
「介護需要はほぼ横ばい。それでも、より重い介護を必要とする人は増える」
同じ大阪府でも、介護人材不足の姿は同じではありません。
だからこそ、
一つの「介護人材不足」ではなく、地域ごとに異なる「複数の介護人材不足」がある。
中河内の数字は、
「何人を支えるのか」だけではなく、「どのような介護を、誰が支えるのか」
そこまで見なければ、これからの介護人材不足の姿は見えてこないことを示しています。
【出典】
・大阪府「大阪府高齢者計画2024」
・大阪府「高齢者福祉圏域図」
・大阪府「令和5年度 病床機能報告」